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コクーン歌舞伎『三人吉三』

2007/6/12-18:30開演 シアターコクーン

今年もコクーン歌舞伎は1階椅子席で。
そろそろ平場席が羨ましくもあり・・・でもあの席で3時間以上はきついだろうなあ。




再演の三人吉三ですが、初演を観てないのでもう驚きの連続。でも、有名な場は歌舞伎座かどこかで観た事があったので、途中で「あ、この場知ってる!」と気付き、しかも以前観た時はわからなかった人間関係とか、事の顛末がきちんとわかったので「あぁ~なるほど」とやっとパズルが組み合わさった感じでした。
歌舞伎らしい、「実は」な筋書きがふんだんに絡み合ってて、それが全部はまる場面に、三人の吉三たちの固く熱い契りと、おとせ・十三郎兄弟、和尚吉三とその父家族の運命の哀しさが集約していて、圧倒されます。
そして、ラストの1幕は、ただただ「魅せる」ことに注力した、短いけれどインパクトを与える1幕。

毎回思うけれど、コクーン歌舞伎は、徹底的に「見せる(魅せる)」ことに拘っているなあ、と。まさに、歌舞伎が持つ様式美を、伝統的な手法と、現代的な手法を使って、畳み掛けるように表現してくる。だけど、だからといってやりすぎ感はなくて、凄惨なお話もなぜか見終わるとすかっと爽快感に満ちた気持ちで劇場を後にすることができる。

最後の1幕は、真っ白な、ほんとうに、真っ白な舞台に、八百屋お七をモチーフにした捕り物劇で、お嬢の赤、お坊の青、和尚の茶(?)が映えることこの上ない。ちらちらと降る雪、そして時にどさっと塊で落ちる雪、その吹雪の中から現れる3人と、捕り手たちの立ち回り、雪は会場にまで降り積もり、幻想的な空間を作りあげ、最後には3人の吉三たちは重なるように斃れ逝く・・・。
芝居は終ったのだろう、とわかっていても、拍手の起こらない、静寂の劇場が印象的でした。いつ、どのタイミングで芝居を現実に戻すのか、観客も、芝居から現実世界に戻っていくのか。余韻を楽しむ時間に流れたのは、椎名林檎。
はまりすぎ!です。
というか、冒頭からエレキギターの歪み(ひずみ)を利かせた音、途中にも和の音の中に時折挟まれていたエレキの歪み。物語の歪みを音で表現しているのだとは、あとから気づきましたが、あの世界観と音の味は、なんとなく林檎嬢っぽい、と思っていたらやはり。まあ、以前の僕らの音楽で林檎嬢が勘三郎さんの大ファンという話をしていたので納得です。

もちろん、笑いどころも忘れない勘三郎さん、冒頭にはお相撲さんかと思うばかりのいでたちで、関西弁と英語(!)を駆使して、NY公演にも余念がない感じ(笑)そして「お金を受け取ったら申告せな!」という自虐ネタまで・・・(^^ゞ
ああ、さらに冒頭の、初めの登場はなんとほんものの犬!舞台をきれいに横切って行きました。さすが。途中にも少し登場してましたが、あの犬だけで会場はどよめきに包まれ、観客は一気に舞台に引き込まれる、心を掴む演出も心憎いですね~♪

ほんとに、イヤホンガイドなくても、老若男女が楽しめる、実際すごいお話なのに、わーすごい、面白かった!と思って帰り道にも話の弾む、歌舞伎の楽しさを存分に感じるものでした。
NY公演の成功を楽しみに、そしてWOWOWでの放映もあるみたいなので、それも楽しみにしています。
あ、もちろん来年のコクーン歌舞伎も!!

by yopiko0412 | 2007-06-21 23:49 | 歌舞伎  

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