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コクーン歌舞伎『天日坊』

2012/6/21-13:00開演 シアターコクーン

今回のコクーン歌舞伎は、勘九郎君、七之助君、獅童さんという布陣で、クドカン脚本で、串田さん演出だけど下座音楽使わないとか事前情報だけでなんかまたすごいことになりそうな!!

明治以後上演のなかった演目を、クドカンがアレンジし直しての上演、天日坊、かなり削ぎ落したそうだけど、それでもかなり密度の濃い、盛りだくさんな筋立てでした。
あらすじ書くの難しいので割愛。




お話としては勘九郎君扮する法策を中心としたアイデンティティ探し、なんだと思う。パンフにもそう書いてあったし。でもそこには、人間が自分のルーツを探す気持ちとか、ほんのちょっとしたことで道を踏み外してしまう弱さとか、でも本来持ってる芯の部分はしっかりあるんだな、てこととか、忠義の心とか、そういう色んなものが凝縮されてた。

勘九郎くんの法策は、みなしごという自分の身の上を哀しく思っていたけど、観音院様と久助がいて、お三婆さんもいて、心やさしい青年だったはず。それなのに、たまたま色々な偶然でお三婆さんの娘と孫の秘密を知ってしまい、自分にとってまたとない好機を目の前にして、眼が眩んでしまう。印象的なラッパの音で黒い心が出てきてしまい、勘忍してや、と泣きながらお三婆さんを、背中合わせに首を絞める場面は、弱さと哀しさとずるさと欲望がごちゃ混ぜ。
その後も、今度は自分の身代りに殺した旅の男が時貞公の側室の傾城の弟とわかって、それも自分の持ちネタとして持っておくことにする。
頼朝公の御落胤だと宣言してみたり、傾城高窓の弟だと偽ってみたりして、そのたび失敗して命からがら流れ着いた先の赤星の古寺に訪ねた時の、もう誰かの振りをするのは疲れた、素直になろう、というあたりは、物語序盤の、道を踏み外す前の法策のようだった。
だけど、赤星の古寺で自分の身の上をぶちまけ、逆に自分の本当の身の上を知ったあと、そして天日坊となって、結局ばれてしまったあと、久助実は大江廣元に「兄者」と呼びかけるところは、でもやっぱり法策なんだよなあ、と思ってしまった。
面白いのは、証人として出てきた猫間中将光義がべらべらと地雷太郎や人丸お六のことを喋ってしまったことを怒って斬った法策。太郎とお六が、その身を盗賊にまで落として金を集めて、忠義のためにやってきたことを、法策はしっかりわかってる。反して光義はそんなことはお構いなし。そして法策、太郎、お六、赤星は必死で戦う。勝ち目はなくても、その忠義のために。
だから、法策が悪事をしてきたこともわかってるのに、こちらは彼らに気持ちが加担してしまう。法策にも武士の血が流れているし、忠義の心を理解してる。変な言い方かもしれないけど、忠義の美しさをあの殺陣で見せつけられた感じがした。

殺陣がね!Twitterやパンフでアクションクラブが関わってることはわかってたけど、途中の殺陣はいわゆる歌舞伎の殺陣だったから、どこで出るんだろう?と思ってたら、最後の大立ち回り!勘九郎君の狂ったような剣捌き素晴らしい!!七之助くんのあでやかな殺陣もよかったな~!お六が割とあっという間に斬られちゃったのがもったいない!と思ってしまった。獅童くんと亀蔵さんも、身体の大きさがあって、重量感のある殺陣だった。かっこいい!かっこいい!

今回色々好きなところがあってほんとどこも大好きなんだけど、前半の出色は亀蔵さんのお三婆さん!もう、お三婆さんのところはどこもかしこも面白かった~!かわいいし憎めないしお茶目だし、そして物語の発端、でもある哀しい役どころ。
クドカンの笑い要素もお三婆さんにいっぱい詰まってた!

あと好きだったのは太郎とお六夫婦。お六の、最初は儚げなお嬢さんだけど、本性現した時のちょっとひねた感じとか七之助くん似合ってた~!ちょっとだけドスをきかせる声なんだけど、でもちゃんと女性なんだよね。で強そうなんだけど、さらに本当の身分を明かした時は、ちゃんと武家の娘っぽさも出る。でもすぐお六に戻っちゃう、とか色んなタイプの女性が見られた。そして獅童さんの太郎もね、彼っぽさ全開なんだけど、それが見事にはまっててよかった。赤星の古寺でのやり取りとかあれ族のノリだよね(笑)面白かったー!!その赤星はお三婆さんだった亀蔵さんなんだからほんと亀蔵さんもおいしい二役!どちらも完璧すぎて、多彩さが素晴らしい~♪

ネコが、今回印象的なメタファーになってたのかな。
最初に化け猫退治した時の怨霊の声が、まさに法策の血筋が呼んだもの。法策にはネコの加護があったのかもしれない。海で遭難しかかった時もネコのいる小舟に救われたし。
ネコは、捨て猫、みなしご、の意味合いもあったのかもしれない。ネコの怨霊が法策を突き動かしたのかもしれない。なんて考えると、冒頭の笑いたっぷりの化け猫騒動も、物悲しいものに感じられるから不思議だわ。

白井さん、近藤さんやら現代劇の方々も、無理なくはまっていて、もちろんトランペットやドラム、ギターやベースなど現代の楽器を使った音楽も、耳に残る。登場人物の心情を、こういう楽器で表すのも効果的だった。
舞台セットも、よくコクーンで見る動く台座の舞台が交互に入れ替わりテンポもよく、しかもセットの背景には、串田さんの描いた画にその場の説明書きまであるなんて!!

なんか色々好きな部分が盛りだくさんで、多分見きれてない部分もあるし、もう一度観たいな、と思いました。


そして、ここから余談ですが、勘九郎くんも七之助くんも、新感線のいのうえ歌舞伎出たらいいのにー!!て思ったり・・・。
いや、こういうと語弊があるかもわからないけど、阿修羅の頃とかの染ちゃんのことをふと思い出したりしたシーンがあったのです。なんか熱量とか、ギャグな部分とか、軽さもあれば重さもある、ほんとに色々な表情と声色を駆使してたし、殺陣だっていけるんだから、はまるはず!と。
まあいのうえ歌舞伎に関してはもう染ちゃんがいるからないだろうな、とは思ってますが・・・。
ああ、そうか、逆に新幹線のいのうえ歌舞伎じゃなくて、歌舞伎役者さんがやるほんとの大歌舞伎をいのうえさんが演出したらいいんでは?!そしたら染ちゃんから勘太郎君から七之助君、あ、今は猿ちゃんな亀ちゃんとか、愛之助さんもいけるわよねー!
・・・・・はい、ここまでくると余談どころか妄想なので、終わり。

by yopiko0412 | 2012-06-22 01:00 | 歌舞伎  

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