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KERA・MAP#3『砂の上の植物群』

2005/5/14 14:30開演-シアターアプル

実は千秋楽だった公演でした。
今回、ちょっとあれ?と思ったのが、パンフレット。劇場に着いたのがゆっくりだったので、開演前には買う時間がなく、休憩時間に買いに行ったら・・・「完売」とのこと。これってどうなんでしょう?いくら千秋楽、この後地方公演があるわけでもない、とはいえ、公演数、客の入りから、どういう見込みで部数を決めているのか、甚だ疑問です。もちろん追加公演があったこともわかります。パイプ椅子、座布団席まで出していて、席数以上のお客さんがいたのもわかります。でも、でも、それでもこの扱いはどうなのかなと。しかも、休憩時間に入るときの場内アナウンスではしっかり「ただいまロビーにてパンフレットを販売しております」と流しておきながら、実際売店には完売しましたという表示だけで、欲しい人には増刷して送付しますなどの対応もない。正直がっかりしました。
まあ、こんなこともあるんだな、という一つの経験値でしょうか・・・。

ストーリーは、日本に戻る途中の航空機の事故で、どこかの島に墜落し、奇跡的に助かった男女10人程の人々が、現地の日本人ジャーナリストを名乗るオギソ氏に匿われていたが、ある日、オギソ氏の代理人という別の日本人が現れ、彼の世話を受ける。しかしすぐに日本に帰れるかと思っていたが、日本では大地震が起こり、大規模テロが起こり、という状況を伝えられ、日本に帰ることができない。閉鎖された世界の中で、次第に人々が苛立ち、心が荒んでいくなかで起こる出来事の数々・・・。




KERAさんのお芝居は、初めてです。事前情報なしだったのですが、前半は笑いどころあり、テンポもいい感じだったのですが、後半になると、ストーリーも陰惨なものになっていき、テンポも落ちてしまったような・・・??
前半色々と散りばめられた、それぞれの登場人物の抱えている問題とか、ストーリー上要所要所で登場するロケットのこととか、最後に向けてまとまっていくのかと思ったら取り残された部分もあるんじゃないかなあ、と。

たとえば、筒井道隆さん演じる国本だけに見える宇宙人(笑)前半しか出てこなくて、何のネタ振りかなあと思ったのに解決無し。あれはやっぱり国本の心の中の空想で、彼は彼なりの方法で現実から逃げていたのだろうと。そう思うしかないんだけど、だったらみんなが狂っていってる中でもっと空想の世界に逃げても良かったんじゃないかとも思いますが。
あと、国本の過去も何かもっと膨らむのかと思ったんですけどね~。殺人を犯してしまう発端が「大事なものを盗まれたから」ていうのはなんかこの御時世でいうところの「キレたら何をしでかすかわからない」みたいなことを連想しました。特に国本の普段のキャラがのんびりのほほん怪獣好き夢見がちのちょっとイタイ人物だからこそ、かも。そこは脚本の狙いなのかな。
ちなみに筒井さんの舞台は初めて見たんですが、うーん、やっぱり演技いつもテレビで見てるのと同じに見えませんか・・・。テレビドラマでも、いつも同じだと思ってたんですが、決定的に同じでした。まああのぼんやりした雰囲気は彼独特のものかもしれませんが。

初舞台の常盤貴子さん、演じる役は、このフライトを最後にスチュワーデスを辞めるつもりだった消先。この芝居では、常にリアリストである役柄、なのかな。父親の過去、母親の自殺という背景を抱えて、こんな状況でも空想に逃げない、リアリスト。彼女の最後の絶望は、自分が出た現地人からの電話の件。逃げろと言ってくれていた、それを理解していればこんなことにはならなかったかもしれないのに・・・。最後は彼女もロケットとマリーの空想に乗っかることにしたみたいだけど、あれは一種の救いなのかなあ。
常盤さんは、声はちゃんと通るし、頑張ってました。あとは舞台上でのテンポとか間なんかがもうちょっとうまくなるといいのになあなんて思ったり。いっけいさんや温水さんとのやり取りが多いから、ますますそう感じたのかも。

他の出演者の方々がすごい。
物語を引っ張る役どころでもある、ミマツを演じたのは渡辺いっけいさん。乗客たちを助けているのかと思いきや、実はスパイであり、彼らを人質に取るための芝居だった。その二面性というか、彼自身も自分の立ち位置の不安定さを感じているからこそのアンバランスなキャラクターがすごかった。ミマツが乗客たちに投げかける情報のどこまでが真実で、彼にどこまでわかっているのかわからないけれど、そのことが彼らの精神状態を追い込んでいたことは事実。それを一歩引いた位置で眺めつつ、自分の計画が次第にうまくいかなくなることに彼自身も苛立っていくその変貌が恐かったです。ああいう「引っ掻き回す」人っているんだな、と思わされる・・・。

温水洋一さん演じるヨドムは、オギソやミマツの対応に苛立ち、墜落した飛行機の航空会社の社員である消先に責任を追及する、という役で、結構典型的な反応なのかと思ってました。しかし漫才コンビの相方、シズムさんの死を理解していない彼は、やっぱりどこか箍がはずれてしまっていたんでしょうね。「シズムの死」に関する部分以外では正常で、シズムに関してだけは逸脱してしまっている、彼もある意味二面性を持った役柄でした。
物語の語り手、というか、時折字幕で説明を入れる現地人の医者の話や、温水さんの2役として登場した現地人の絡むストーリーからすると、現地の地主(?)の息子とヨドムさんは似てた。だから彼は殺されずに済んだ。でもそれがまた別の悲劇を生むことにはなってたんだけど・・・。うーん、悲劇の連鎖?

生き残りの人々の多くが、色々な方法でそれぞれ現実から逃げていた。
池谷のぶえさん演じるボウゾノさんは、まさにそのまま、頭を打っておかしくなってしまった。でも時々正常になる。けれども、彼女だけはある意味幸せな逃げ方をしていたのかなと。それももしかしたら演技じゃないかとすら思わせられたんだけど・・・あれはどうなんだろう?それにしても、池谷さんのあの浮世離れした雰囲気、さすがです!

でも、「空想の世界に逃げている振り」をして逃げていた一番の人間は、マリー。未来からロケットに乗ってやってきた、といい、未来の話をし、未来ではみんなが幸せであるという。彼女は、徹底的に、自分の空想の世界に逃げることに徹していた。そこに周りの人々も乗っかり始めていく過程が、現実にもその方が幸せかもしれない・・・。でも彼女は登場するまでどこでどうしてたんだろう?現地人との会話もできてたけど・・・何を言っていたのか気になる~。

それから、猫背椿さん演じる、ナナ。彼女はかわいそうでみていられない・・・。なんとかして平静を保とうとしてみたり、空想の世界に逃げてみたり、必死なのが痛々しい。そして彼女自身の狂気は恋人ミツオへ向かう。キレたナナちゃんの演技がめちゃめちゃ恐くて、しかも哀しみが大きかったな。最後彼女が現地人に殺されてしまったのが釈然としない・・・・・。
西尾まりさん演じる真柴さんも、哀しい役。西尾さんの抑えた演技が余計に哀しそうだったのかなあ。
それにしても、ナナちゃんと真柴さん、二人の哀しみの根源は、赤石・・・このキャラだけはもう前半からどうにも受け入れがたかった・・・もうほんとに、思い出してもイヤだ。てここまで思わせる演技をした役者さんもすごいけど(汗)しかし赤石が弾くピアノ、音が録音なのは許すとして、あれは片腕じゃ弾けないって・・・思わず彼は実は片腕失くしてないんじゃないかと思ってしまったくらい。あれはいただけないなー。

それぞれの人物の問題とか、解決してないなと思うんだけど、それはこっちの想像に任せますな終わり方なのかな?あのロケットは国本の持ってた部品で動くのかと思ってたんだけど・・・語られてないだけでそうなの?
色々強烈な投げかけをされてたけど、その中で一つあげてみると、マリーの台詞。「これも戦争なの?・・・遠くの戦争は面白いけど、近くの戦争はつまらない(面白くない、恐い、とかそういう感じ)」(細かい言い回しは不明)・・・人間って恐い。
KERAさんっていつもこういう系統なのかしら?もう一つくらい観てみてないと、好き嫌い判断できないかなー。


カーテンコールでは、千秋楽らしく、派手にカラーテープなんかが飛び散って、KERAさんが出てきて御挨拶。宇宙人の妻とその子供の説明までしてくれました(笑)これは千秋楽だからじゃなくていつもやってたのかしら?

by yopiko0412 | 2005-05-16 13:29 | 演劇  

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