人気ブログランキング | 話題のタグを見る

龍馬伝第二十二話「龍という女」

龍馬伝第二十二話『龍という女』

先週、武市さんが囚われ、土佐勤王党を含めた攘夷派が土佐でも、京都でも、弾圧される。今週は、以蔵の捕縛。そして、以蔵を探す龍馬が、お龍と出会う。



勝塾にも土佐の手は伸び、佐藤先生や塾の仲間のおかげで連れ戻されずに済んだ龍馬たち。「藩の堺がない勝塾」という図式がきちんとできあがっている。それでも、土佐勤王党の面々はどうしたらいいかわからない。
そこへ、以蔵の急を知らせにきたなつ。以蔵を探すことにした龍馬は、その道中で攘夷派を匿う宿に泊まり、お龍と出会う。借金5両のかたに妹を連れ去られたお龍は妹を取り返すといきまく。
そんなお龍に乙女ねえやんから届けられた5両を渡す龍馬。ここで、春嶽公に話した「生き金」「死に金」の話が伏線として生きてくる。親兄弟に迷惑を掛けて、なおまだ何も成し遂げられない自分がこの5両を使っても、死に金になってしまう。それであれば、自分ではなく人助けに使うことで、生き金にしたい、と。細かい伏線だけど、龍馬の価値観がきちんと確立されていることがわかる。

以蔵は、先週の流れでは龍馬に会えず、モノも言わずに斬りつけてきた新撰組から辛うじてのがれた。そしてやっとなつのところへきて「おまんしかおらん」と、「ずっと一緒にいよう」と言ったのに、なつは以蔵の罪を知り、恐ろしくなってしまった。なつにも拒絶される以蔵・・・。後半、龍馬に出会った時、「人を斬ったのが何がいけないのか」「武市先生はいいことだと言ったのに」と言う彼は、武市のいう正しいことをしたのに、何故自分が追われるのか、なつにも拒絶されるのか、わからない。
路地の民家から、自分の名前を呼ぶ龍馬にも斬りかかる以蔵の描写が、ああ、逃げ惑う人間の狂気ってそういうことか、と。その前にお坊さんからも逃げてる。もはや、周りの人間誰もが、自分の名前を呼ぶ者、自分に声を掛ける者、全てが自分の追手かと思いこんでしまう、心理表現。目の焦点が合って、龍馬を認めた以蔵の縋る様子がまた痛々しさを表現。
しかし、助けたい龍馬の手助けとは裏腹に、新撰組と、幕府の役人に追われた以蔵は叫びながら捕縛される、やはり「何がいけない」のかわからないままに・・・武市さんの罪は重い。
この、以蔵が逃げ惑う路地の風景が、印象的。極力色を排した街並みだけど、紅い番傘が並び、色とりどりの布が干されてるのか、はためいている。この界隈は染物屋でもあったのか?わからないけれど、カラフルなその布や傘と、逃げ惑い、追う人間がその色の中で逆に浮き出る。あの布や傘が目隠しにもなり、邪魔でもある。美しいものに目をやることもできない殺伐とした世界。美しいものを踏みにじってしまう殺伐とした世界。

土佐では、武市が投獄されている。この牢獄も、3面格子になっていて、美術さん渾身の作だそう。
その効果は、光の差し込みだけではなく、敢えて外の音が聞こえる構造、にもある。まがりなりにも上士に取りたてられている武市には拷問はできないが、武市に聞こえるように、勤王党の面々を拷問にかけることで、武市を追い詰める象二郎。武市さん自身を拷問するよりも、より一層彼の心には痛い。象二郎は知ってか知らずか・・・。
武市家の富さんのところには、乙女ねえやんが声を掛けに。相変わらず多くを語らない富さんだけど、縫っているその着物は武市さんのものですか・・・。お富さんの背後に、番の金魚がひっそりと泳いでいて、お富さんの「どこにも行かず、ここで二人で過ごしたい」という願いのように見えた・・・。

以蔵が捕まったあとの龍馬の描写。また、龍馬の表情は敢えて見せない演出。まばゆい明りのおかげで、逆に深い闇の中にいる龍馬。声だけでほとんど姿も見えない。まさに、龍馬の心境そのものを演出していたのかな。そしてこれまで龍馬の周りの女性は龍馬に手料理を出し、褒められる、という図式があったけれど、今回お龍さんはいいにおいだ、とは言われたが、「下げてくれ」と・・・。
「また」大切な友達が捕まってしまった、自分は何もできなかった、と言う無力感に打ちひしがれる龍馬。今回龍馬はお龍と妹は助けられたけれど、以蔵は助けられなかった。全てが自分の思う通りにはいかない道理。今回のタイトル、変更前の「お龍と以蔵」はまさに「お龍との出会い、以蔵との別れ」だったんだ・・・。こうしてまた、龍馬は新しい出会いと、旧友との別れを繰り返す。これからも、そう。だけど、最後には龍馬自身も同じように誰かを残して倒れることになるのだけれど・・・。

今回長次郎とお徳さんの場面でまた、長次郎が「饅頭屋」であり、「武士」ではないことが語られていて、これも彼のこれからの運命のための伏線に思える。だけど、長次郎が「武士」ではない、という話と並行して、土佐では容堂公が「土佐では侍は上士だけ」と暗に下士は侍、武士ではない、と言っているのが、また皮肉。その「武士ではない下士」が、京都で、土佐で、追われ、脱藩の罪人にされ、捉えられ、投獄されていく。ではその罪は何か。大いなる矛盾。

今回本格的に登場した新撰組、でも、ラジオで福山氏が言ってたように、あまり語らない。ただ、そこにいて、そして刀を構える。ぎらぎらしたSWAT的仕事人。この新撰組の3人も、やはり路地や林を逃げる人間を追うだけに、汚れている。汚れていて、浅葱色の羽織も、少し皺やだれがある、そんなリアリティ。
それから、美術的な演出だと、容堂公の縁側での酒盛りのお供に紅葉の一枝。ああ、もう秋になったのだな、という細かい演出。

来週は池田屋事件!もうこれから先どんどん血なまぐさいことばかりになっていくのか・・・。

by yopiko0412 | 2010-05-30 23:48 | 龍馬伝  

<< 龍馬伝第二十三話「池田屋へ走れ」 龍馬伝第二十一話「故郷の友よ」 >>