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演劇集団キャラメルボックス『TRUTH』

2005/03/19 14:00開演-サンシャイン劇場

キャラメルボックス20周年記念公演第一弾『TRUTH』観て来ました!

キャラメル初観劇だったんですが、すっごい持っていかれました~!
劇団公演特有のアットホームな雰囲気あり、でも舞台は当然真剣勝負、休憩なし2時間超の時間を感じさせない舞台運び、もっとここのお芝居を観て見たい!と思いました。

(以下、ものすごい長文になってます・・・。)



劇団公演だからか、ちょっと新感線と共通する雰囲気も感じた点をいくつか。
まずは、前説。前説だけで10分くらいありましたか。舞台に生の前説があったことはありません。(オケピ!とかマダムバタフライの時の三谷幸喜さんの歌やお話はテープだったでしょうから)客席への誘導の時間を使って、劇団の話から、本番の注意事項まで、とても楽しい前説でした。噺家さんかと思うくらいの喋りでしたけど、あの方、総合プロデューサーだったんですね~びっくりしました(笑)
前説自体もお約束のようですし、その中にも、他のお客さんの反応的に、「お約束」っぽいことがあったんですが、なにぶん初観劇なのでわからなかった・・・残念。でも、こういうところに、「お客さんとの距離をなるべく近く」というパンフレットの言葉を実感しました。
あとは、カーテンコールも、あのパターンがお約束なんでしょうか?回数はわからないけど、最終的に千秋楽でもないのに役者さんがあんなにお話するって珍しい。上川さんの突っ込みも観れたし(爆)

お話は、幕末の動乱の中にいる、若い武士たちの物語。時間軸を前後にずらして、途中で追い越していく構成、これがすごく効いてた。時間軸をずらすから、ともすると理解しずらくなるんだけど、この舞台はそれも大丈夫。前半説明調になることもなく、どんどん引き込まれたなあ。そしてそのままぐっともって行かれたまま、突っ走った2時間強。

ストーリーは、重たい。キャラメル的にはこんな辛い話は珍しいらしいけど、ほんとに辛い。でも、最後の落とし方にぐっときました。だって、途中まであの展開を観ていた私は、「最後は二人とも死んじゃうんだろうな」と思ってたわけで、それをいい意味で裏切ってくれて、しかもあの結論で・・・。私自身、途中まで鏡吾に騙されてました、普通に。どちらかというと、弦次郎は、英之助の暴走を止めようとして、殺してしまったんだと思ってたくらい。それが、途中からもしかして鏡吾?と思ったら、ついには山岡様まで・・・。

でも、鏡吾には鏡吾の想いがあった。彼は「自分にはTRUTHなんてない!」と否定していたけれど、彼の想いは「無実の罪を着て死んだ父の無念を晴らしたい」という一点にあったわけで、それこそが、彼のTRUTH。自分の置かれた境遇をずっと抱えたまま、その想いの為に生きてきた。そしてその想いを果たす機会ができた・・・。だけど、弦次郎の耳が聞こえなくなったのは、彼にとっても予想外の出来事だったはず。彼の耳が不自由になっていなかったら、あの英之助暗殺は成立しなかった。だからこそ、あの暴発事故が無かったら、て思う。もし弦次郎の耳が不自由になっていなかったら、藩の内部対立もあんなことになっていなかったかもしれない、そうだったら、鏡吾の英之助暗殺もなかったかもしれない・・・。と思うと、あの暴発事故は鏡吾にも、英之助にも、もちろん弦次郎にも、悲しい伏線。
最後に、弦次郎から課せられた「生き続け、苦しみ続ける」ことは、そんな彼にも何かを訴えたはず。弦次郎に「殺せ」と言ったが、殺されなかった鏡吾、そこで死を選ぶこともできたのに、彼はそうしなかった、それは、弦次郎の言葉に何かを感じたから、だと思う。

弦次郎は、このお芝居の中で、一番辛い人。死んでしまった英之助以上に。彼は、このお芝居の中で、初めからほとんど苦悩し続けてた。だからこそ、後半の回想シーン、2年前に弦次郎が大阪へ旅立つ前の、英之助と初音さんとのシーンが余計に切なかった。彼らが屈託無く、輝いてた時期、現在の影の濃さが、過去の光の眩しさを強調してたなあ。
「必ず戻ってきます。待っていて下さい。」という言葉。これも伏線ですね。この言葉は、弦次郎にとっての核になってた。初音さんと、英之助との3人の微妙な関係だけど、この言葉だけは彼のためのものだったから。だから、彼はこの言葉を残していった美緒さんを待ったんじゃないかな。
弦次郎にとってのTRUTHは何だったんだろう?英之助との友情、初音さんへの想い・・・でも彼はそのどちらも失ってしまった。そして死をも覚悟して、それを乗り越えて、彼が辿り着いた結論、それは「生き続け、苦しみ続ける」こと。「鏡吾を恨んでいないといえば、嘘になる」と言いながら、最後に彼は鏡吾にも死ではなく自分と同じように「生き続け、苦しみ続ける」ことを課した。それは恨みでもなく、単純な許しでもない・・・罰、なのかな。彼はこの後、決して初音さんと一緒には歩もうとしなかったんじゃないかな。

もう一人、暴発事故が伏線だった人、隼助。彼は弦次郎の耳を不自由にさせてしまったことの負い目を感じているだけではなかった。彼は昔から弦次郎を慕っていて、彼の耳が不自由になった後も、彼の言葉をきちんと受け止めていた、だからこそ、「彼を信じること」ができたんだと思う。それが彼のTRUTHだった。隼助も、冒頭から苦悩し続けていた、始めは彼がなぜ苦悩しているのか、なぜ弦次郎に「隼助、お前もか?!」(シーザーとブルータス、の関係と絡めてますか、この台詞)と言われたのか、わからなかったけど、それが物語の中できちんと繋がって、最後の隼助の行動になる。この隼助の行動がまた、虎次郎に「私はあなた(鏡吾)が隼助を斬ったから、あなたが信じられなくなりました。」と言わせてる。それは、虎次郎自身が、今まで培ってきた仲間との関係、そこに生じた仲間同士の殺し合い、疑い合い、斬り合いの中から導き出した結論。この台詞には彼らの関係性がぎゅっと詰まっていた、真理、だと思う。

女性陣について。このお芝居、女性は3人しか登場しません。その3人も、それぞれ立場は違うけれど、抱えているものがある。ふじさんは、やはり虎太郎のことが一番大事。そして、虎太郎の仲間たちとの関係も、とても大切。彼女に関しては、「夕餉」という言葉が象徴的。虎太郎と仲間たち、はじめは一緒に食事をしていたのに、だんだんその関係性が崩れるにつれて、食事もしなくなっていく。「夕餉を用意する」ことを理由に男たちの会話から遠ざけられるふじさんだけど、それでも必死になって彼らの中に入っていこうとする、それは、虎太郎のため。そして、美緒さんから託された、弦次郎から初音さんへの手紙を届けた彼女は、たった一人、既婚の女性として、譲れない「想い」があったから。そして真実を知った彼女が心配したのは、虎太郎のことだった、ていうのも、彼女の一貫した姿勢を現してたなあ。
初音さんも、弦次郎と同じくらい、辛い人。親友同士の二人の男性から想われ、自分はその内の一人を想っていて、でもそのことで彼らの友情を傷つけたくない気持ちと、それでも自分が弦次郎を好き、という気持ちも捨てられない。だからこそ、「今でも弦次郎のことが好きか」と問われて、「好きです」ときっぱり答えられる、その芯の強さが彼女の強みであり、悲しみでもあった。彼女は、この後、弦次郎にどんなに拒否されても、それでも常に彼の近くにいて、彼を見守り続けるんだろうな、と思う。
もう一人、報われない一つの想いを貫く人、美緒さん。彼女も、弦次郎のことが好きで、でもそれが叶わないことも知っている。それでも彼女も弦次郎のために自分にできることを何でもする、ということに一生懸命になった。そうすれば、彼の傍にいられるから。そして、その信念の元、「必ず戻ります。待っていて下さい。」という言葉を残して、弦次郎から初音さんへの手紙を届ける、という危険な行動に出た。それは彼女にとって弦次郎と一緒にいるための方法のはずだったのに・・・(涙)

それぞれの登場人物が何かしらのTRUTHを持っていて、そして目の前で起こっている出来事の答えを探している、その想いにはちゃんとした理由があって、伏線がある。すごく緻密に計算されたお芝居で、しかも最後は一つの結論を見せながらも、その後を観客に委ねている、そんな舞台。
観終わった後は、筋を知った上で、もう一度同じ舞台を観てみたい、もう一度観れば、また違った伏線や想いに気付くだろう、と思う。そして、こんな舞台が観れるなら、ハセキョー(笑)が出て無くても、この劇団のお芝居を観てみたい、そんな風に思わせてくれた、イイモノ観させてもらいました!!

by yopiko0412 | 2005-03-20 23:52 | 演劇  

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