『SISTERS』

2008/7/7-19:00開演 PARCO劇場

期せずして、初日だったようです。道理で、関係者席に長塚氏がいた訳だ。

長塚作品にしてはグロテスクさはなく、もちろんテーマは非常に重いんだけど、魅せる演出が美しくもあった。
ミニマムかつ地力のある俳優陣で、初日故のミスはあったけど、磐石な印象。




演出はこれ、私の好きなタイプでした。セットは一つ、同じホテルの部屋を2つの部屋に見立てて、人と時間が自在にその空間で交錯し、時に混じりあい、すれ違いしながら、そこに生きる人々の生(性でもいい)を浮き彫りにしていく。
ラストの水を湛える演出も、彼女たち、彼らの、さざ波立つ心を、ざわざわした憤りを、思うようにいかない苛立ちを、どうしようもない哀しみの涙を現しているようで、無闇に撒き散らす訳でもないのに効果的で印象深い。

脚本は、様々な情報を断片的に散らばせながら、ピースがはまると、見えなかった部分も見えて、または想像することができて、という構造。

パンフレットで、信介だけが観客目線、というコメントがあったけど、まさにそうだな、と。
彼の、馨への愛情がしっかりしてるからこその苛立ちとか、馨に対しての対応とか、最後に投げた言葉は、誠実だし真理だ。あの中でただ一人、正常を保っていた、彼はあの後、馨を救うことができたんだろうか…。できれば、そうであって欲しい、と願わずにはいられない。

馨は、美鳥を救いたいと言っていたが、実は彼女自身まだ救われていなくて、それは妹を救えなかった傷か、はたまた父に最終的に愛された(故に一緒に死んだ、と馨が思っている)のが妹であったことの、彼女自身の喪失感なのか。
どっちだとしても、なつきと同じ結末を迎えてしまった美鳥親子は彼女をまた同じ闇に取り残すんだろう。
美鳥自身も、結局自分がどうしたいのか、なぜ叔母や馨に打ち明けてしまったのか、整理はついていなかった。父とのことがなければ、ゆうじに弄ばれることもなかったかもしれない。妊娠しなければ、叔母が自殺することもなかったかもしれない。自分を悪いと追い込んだだろう。
だからこそ混乱し、それでも、馨に追い詰められた時、彼女にとってたった一人の絶対的な存在の父の元に戻るしか選択肢がなかったのか。

美鳥の父は、妻にも暴力を振るっていたようだし、馨がいうように、絶対的な力で相手をねじふせることでしか愛せない、もしくは自分を維持できない人だったのだろう。
だから、平穏な生活に妹の自殺が波を立て、その波が徐々に広がっていくことへの不安を感じていた。実際その不安は現実になってしまったわけだけど、それもこれも美鳥のせい、ということになったのかもしれない。

正解なんてない、感じたままに、自分の想像力も加えて、あの空間に確かにあった愛を考えるばかり。
材料は他にもたくさんある。例えば、色。舞台の色彩感覚も計算されていて。人やモチーフを的確に現した印象的な色が、暗い舞台に映えていました。

こうして言葉を並べていると、また舞台を思い出し、今気付くこともあったりして、いい刺激をもらった舞台でした。
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by yopiko0412 | 2008-07-09 23:27 | 演劇  

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