野田MAP『キル』

2008/1/20-14:00開演 シアターコクーン

すっかりいつの話状態ですが、これが、2008年の観劇初めでした。
この演目については過去の上演があちこちで評判が良く、また出演者も心惹かれる方々だったので、気になっていた演目。今回の配役は予測しがたいというか、どうなるか?!という感じではありましたが、でも主役二人以外の盤石の出演者と、何より野田秀樹の傑作と言われる戯曲をやっぱり生で観たい!という思いで、WOWOWでの映像も未見で観劇。




相変わらずの、野田秀樹特有の言葉遊びというか、言葉の洪水、そして二重に重なった、または鏡のように対称な、かと思えば輪廻のように巡り巡った、複雑な世界観の中で展開される物語に、圧倒されてしまった。
モンゴルの羊の毛で織りなされるデザインが描くのは、追い求めるのは、自由。
モンゴルという世界地図だけが世界だと思っていたら、実はその外には別の世界が広がっていて。
世界中に自分のデザインを拡げ、「制服」を着せることで「征服」しようとする。
自由を追い求めながら、自由を掲げながら、その行動は縛り、征服することになっていく。
自分が負わされた宿命は、子の世代にも連なって、自らに降りかかってくる。
自分たちは人間で、蝋人形だと思っていた人形たちが、実は動き出し、逆に自分たちを見つめている、相反する世界。
言葉と文字という道具を武器に、生きる道を模索し、自分の存在価値を見出してきた男が、その言葉と文字によって糾弾される。

支離滅裂になってしまうのでうまくまとめられない・・・もどかしい。
私が猛烈に感情移入して観ていたのは、結髪。モチーフは、やっぱりシラノ・ド・ベルジュラックですかね。テムジンとシルクの二人の手紙を代筆し、自分で自分に返事を書く。その言葉を聞いたシルクは、その言葉に恋をする、そんなシルクに本当の恋心を抱く結髪。でも真実を告げられない、苦しさ。
テムジンの目を盗んで、ついにシルクの心を得ることに成功し、それでもなおテムジンに仕えるが、次第にテムジンを取り巻く環境が変化していく。
そんな中、それでもテムジンと、シルクと、シルクの息子を救うために図った切り札が、真実を暴いたにも関わらず、その図り事は実を結ばず、ついにその命は絶たれる。その時結髪を救うために走ったシルク、息絶える結髪、その後に結髪の言葉が真実であったことを知るテムジン。このシーンは結髪の勝村さんがあまりにも悲痛で、そして凛としていた。涙が溢れる。

野田さんの演出も、また意表を突く。かなりの斜度の八百屋舞台をモンゴルの草原と砂漠の世界に見立て、紗幕を使ったり床を駆使したり。コクーンの舞台機構の「なんでもできます」感も相変わらずすごいなーと感心してしまいます。

出演陣では、主役のテムジン、妻夫木くんは、初舞台。どうかな、と思ってましたが、やはり2か月にも及ぶ公演ですでに後半戦に入っていて、声がつぶれ気味だったのがとても残念。
そして、テムジンの若さは表現されていたけれど、後半の「征服」に取りつかれたテムジンにもう少し重厚さとか、狂気めいた雰囲気とかがあってもよかったのかな、と思ったり。堤さんのテムジンだとどうだろう、なんて邪なことを考えながら観てしまった・・・ごめんなさい。
シルクの広末涼子。えーと、映像の女優さんとしてはあんまり好みではなかったのですが、舞台では初。つかさんの舞台も経験してるし、透明感はあったかな。発声が独特で、これはきっと野田さんの演出なんでしょうけど、高いトーンでころころと転がるような音を出す。これが、深津絵里さんの発声とすごく似てる気がして・・・ふかっちゃんで観たかった(汗)
人形の高田聖子さん。この人はこういう「女」な役がさすがにはまります!終盤、人形がテムジンに本性を明かす場面の毒々しさ、結髪とシルクの密会を暴く時の矢のような空気感が、それまでは細かく張り巡らされていた人形の伏線をどーっと放出していました。
もちろん、結髪の勝村さんはさすが。
そして、役者野田秀樹は、その身体能力を自分自身で余すところなく披露!あの年で、開脚が完璧にできるとは・・・そしてあの身体の動きは、普通じゃ無理ですって。すごすぎ。

あと、やっぱり好きなのは、野田さんの語感で作られる言葉、そして登場人物のネーミング。
この感性は本当にどこからくるのか?!と思います。シルクとか、結髪とかは比較的わかるけど、トワとか、西の羊で西洋、とか、制服を着せて征服、とか、そして「蝋」「~~ろう」の使い方、「キル」は「着る」と「切る」なんだとか。これは戯曲を読んでみたくなります・・・。
蛇足を一つ。
同じく語感でネーミングが大好きなのが、中島かずきさん。オリジナル脚本のネーミングは、漢字の使い方も含めて凝ってるし、かっこいい。
んで、その中島さんが企画から脚本(全部じゃないけど)も担当していたというアニメ、「天元突破グレンラガン」を、今再放送で見てます。ストーリー性のすばらしさはもちろんのこと、そこでもかずきさんのネーミングセンスが炸裂してて、これが笑えます(笑)だじゃれかよ、とも思うけど、そこにちゃんと意味はあるし、しかも初めのうちは気付かなかったもんなー、だじゃれだってことに(^_^;)
今、だいぶ佳境に入っているこのアニメ、毎週楽しみにしています♪
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by yopiko0412 | 2008-02-11 02:02 | 演劇  

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