『ロマンス』

2007/8/15-19:00開演 世田谷パブリックシアター

こまつ座で、井上ひさしで、このキャストで、なんとかとれたお盆の平日の夜のA席チケットでしたが、上質な舞台を観た、というものでした。

舞台は、ロシア。医師であり、作家であり、戯曲家でもあった、アントン・チェーホフの生涯を、幼少期から晩年まで淡々と綴っていく。そこにいるのは、チェーホフと、その献身的な妹マリア、そして伴侶オルガ。幼少期、青年期、壮年期、晩年を男優4人がリレー形式に演じ、それぞれの時代のチェーホフとマリアの、周りの人間との関わり、エピソードを並べることで、チェーホフの人間性や、想いがだんだんに描き出されていく構成も、そして最小限の実力派の役者たちの演技も、さすがのものでした。




チェーホフの戯曲は、観たことがありません。本でも、舞台でも。作品名はしっているので、劇中で出てくると、そこで話されている内容から、どんな戯曲なのか、どんな舞台なのか、非常に興味が出てきました。やはり、悲劇なのか、喜劇なのか、どちらとも取れる、どちらにもなりうる、そんなものなのでしょうか・・・?彼が、劇中で演出家に激しく詰め寄るシーンを見て、ボードヴィルとして演出される、彼の戯曲を観てみたい、と思わせられました。
また、マリアとオルガ、この二人の存在は、チェーホフにとってどのようなものだったのか。オルガのことはもちろん愛していたでしょうし、結婚という価値観を否定していた彼に、結婚を決めさせた、離れて暮らしていても、楽しくお互いを想いやる彼らのやり取りは素晴らしかった。
でも、それまでずっとチェーホフを支えてきた、自分の人生を掛けてきた、マリアの想いを、彼は果たしてわかっていたのか・・・。彼女よりあとからチェーホフの人生に関わり始めたオルガが、自分が支えてきた兄と結婚し、彼を変えてしまった、彼に無理をさせようとする、そのことに対するマリアの心中はいかばかりだったのか、とも思ってしまう。でも彼女は常に節度をもってそれを制し、ただひたすらに兄のために意見し、そして兄にもオルガにも尊敬を忘れない。そんな彼女に、チェーホフは最後に、様々な言伝を残す。きっと彼女は実行したんだろうな、と思う。チェーホフも、オルガではなく、彼女にその伝言を残したのは、彼女のそういうところを理解していたから。と思うと、でもそれもチェーホフが彼女のことを理解していた、ともとれるし、だからこそあんな伝言を残すことで彼女に大きな宿題を残すことになることには気づいていないのか、とも思えたり。うーん、どうなんでしょう?

役者さんは、さすがの粒ぞろいでしたが、歌メインの人と、演技メインの人と、どっちもの人といましたかね~。
大竹しのぶさんは、前にも思ったけど、歌は地声のところだとちょっと・・・で裏声になると歌っぽいんですけど、やっぱりこの方は演技が光ります。
松たか子さんは、歌も演技もすこーんと突き抜けるその声の強さがほんとに強みだと思います。
男優陣は、全員一度はチェーホフを演じるというある意味ハードルの高い構成。
幼少期は井上芳雄さん。当然のことながら、歌比重が高かったと思います、最後も歌ってたし。歌声は声楽っぽい声だけど、演技の声はちょっと違うかな、でも聴きやすかったです。
青年期は、生瀬勝久さん。実年齢とのギャップがあるけど、でも明るくはっきりした声でさわやかに若々しさを出していて、医師として歩み始めたばかりのチェーホフの理想や絶望が伝わってきました。
壮年期は段田安則さん。この方も声は折り紙つき。歌はちょっとあぶなっかしいけど、そんなの気になりません~。戯曲に目覚めるチェーホフ、そして生涯の伴侶と出会うチェーホフ、彼にとって大きな節目であるこの出来事が、真に迫ってきました。
晩年は木場勝己さん。こちらも、晩年のチェーホフの嘆きと喜びを大きな存在感で表現していました。

これまで井上ひさしさんの舞台はいくつか見ましたが、今までは歌の入り方というか、歌詞や調子がしつこくて歌の途中で飽きてしまうことがあったのですが、今回はそんなことはなかったです。なんでだろう?今回和モノじゃなくて洋モノ、しかも舞台がロシアなので音が短調気味で珍しく、しかもピアノの生演奏だったせいか、とっても舞台にマッチしていたし、飽きるということはありませんでした。
そう、ピアノの生演奏も素晴らしかったです!ピアノを弾いていなくても舞台上に存在し、時には役者と絡んでみたり、大活躍でした♪

淡々としてはいましたが、面白く観ることができたのは、構成や演出、そして確かな演技のすべてがきっちりはまったから、だと思います。
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by yopiko0412 | 2007-08-26 20:42 | 演劇  

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