『さくらん』

写真家蜷川実花の初監督映画、漫画が原作ですが、全くの初見でした。吉原の物語だってこと、色彩豊かだってこと、土屋アンナが主演だってこと、くらいしかしらずに観たので、ところどころ話が唐突で繋がらなかったりしましたけど、先の展開が読めない(あるいは予測できる)ので面白く観ました。

しかし観終わったあと原作愛読者の同行者によると、大分話の構成が変わっていたり、途中までは原作の通りだけど、後半は完全にオリジナルのストーリーだったり、だから分かりづらいのと共感しづらいところもあったんじゃないか、とのこと。
原作読んでみないとねー。




R30 でこの映画について語った蜷川実花の話で、「どうせ吉原なんて誰も本当に観たことはないんだから、よっぽど時代を無視してない限り、好きな要素を詰め込んでみてもいいんじゃないかと思った」とのことで、だから店の障子の色を色とりどりにしてステンドグラスちっくにしたり、金魚があちこちに散りばめられてたり、という斬新な美術が面白かったですね。花魁になった日暮の道中する時の着物なんてありえないから!みたいな(笑)
この「どうせ誰も本当には知らない世界」という捉え方は、確か歌舞伎役者の方もそんなこと言ってたと思います。誰だったか失念・・・その時はどうせ誰も江戸時代がどんなだったか知らないんだから、みたいなニュアンスだったかと。

前半は、身売りされて、花魁として生きる決心をするまで。
禿時代についていた粧ひ花魁とのやりとりが、すごかった。花魁の手練手管に乗せられて「花魁になってやる!」と宣言するきよ葉だけど、どうしても自由を求めて何度も逃げる。そして、粧ひが身請けされて吉原を去る時、きよ葉にだけ簪を贈る場面も秀逸。「人より多くもらう者は、人から恨まれる」(だっけ?妬まれる?とにかくそんなニュアンス)てことを実践できよ葉に教える。その前に粧ひの客とのやりとりを覗くきよ葉に向けた笑顔が、その後花魁になったきよ葉に受け継がれてたり、「金魚はびいどろの中にいないと死んでしまう」とかね、金魚は女、びいどろは吉原(もしくは置屋)ってことですが、そういう現実をがんがんきよ葉に突きつけていく粧ひは、女の世界に生きる、女。彼女もあそこまでの境地に至るまでは色々あったんじゃないかと思います。

そして、新造になったきよ葉と対決するのは、高尾花魁。これもまた粧ひとはタイプが違うけど、すんごい女。きよ葉の美しさにライバル心剥き出しで、きよ葉と同じ新造と二人してきよ葉を追い詰める。けど、彼女は自分の不安を、きよ葉をいじめたり彼女が不安になったりするのをみて紛らわそうとしてたんじゃないかと。
彼女は粧ひより弱かったのか、間夫に入れ込んで、その想いが高じてあんなことになった。粧ひには間夫の影はなかったし、身請けしてくれた人も登場しなかったし、その人のことを本気で愛してたかどうかわからない。もしかしたら粧ひはそこは割りきりまくってた。高尾は割り切れなかった。その違いかな。
で、きよ葉がどっちの生き方を選ぶのか、ていう場面がすごい重要なんですが。初めて自分が惚れた男に裏切られ、そのことを確かめに行った、その場面は、それまでの豪華絢爛を一切排除した、雨の中汚い着物に身をやつし、泥だらけになりながら人気のない江戸の街を行き、辿りついた先で見たその結果は・・・うーん、成宮くん演じる若旦那の心情が分かりづらかったです。ていうか、私は舞台でも映像でも成宮君がどうしても肌に合わないんですが、今回も、でした。残念。「笑う、鬼」と言わしめるほど、ではなかったかなと。

そして自分から吉原に戻ったきよ葉は、ついに花魁に上り詰める。それにしてもあの日暮のキャラって花魁としてはかなり異色。だからあの倉之助さま(だっけ?きっぺい氏です)が惚れこんだのかしら。彼と日暮の心の関係があんまり描かれてなくて、倉之助様があんなにも日暮を求める理由がわからなかった。誰の子かわからない子を宿したままでも、その子を産むつもりでも、身請けされてくれ、しかも妾ではなく、奥方として、だなんてそこまで思いつめる説得力が無かったんですけどね・・・。
で、日暮は結局なんであんなにもさくらにこだわったのか。そこも説得力がなかった。あの桜も、吉原の中にあるのに花を咲かせることが出来ない、本来の姿でいられない吉原の女たちの象徴のような感じなんだろうけど、あの桜が咲いたら、といった清次の言葉が心の拠り所だった、の?

物語的には、あそこで終ってるけど日暮の禿が言ってた言葉が二人のその後を暗示してるんでしょうねえ。束の間の自由を手に入れた二人の様子は楽しげだったけど、最後のメッセージがわかりにくかったかな。
視覚的にはとっても美しい場面でした(*^^*)
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by yopiko0412 | 2007-03-11 16:25 | 映画  

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