劇団☆新感線『朧の森に棲む鬼』役柄・ストーリー感想

2007/1/2-14:00開演 新橋演舞場

新感"染"の新作、初日を観てきました。新感線で初日は初めて。これもお正月だから可能でした。今回は3階席、2列目センターから。今後1階席もあるので、まずは照明や舞台上の大きな動きが見られる位置で。

以下、まだ初日にも関わらず思いっきりネタばれます。だってストーリーで気になることがあるんですもの・・・。




ストーリーは、リチャード3世を下敷きに、酒呑童子っていうのも混ざってるらしい。後者は知らないけど。あと、どうしてもマクベスも思い起こされたなあ。と思ったらパンフレットで中島さんもその点は認めてる。「メタルマクベス」があっただけに不利だよねえ、ということも含めて、さすがです。
ちなみにパンフで言われてる「スサノオ」シリーズは観たこと無いのでそこの繋がり感とかがわからないのがとても残念。

主人公ライは、剣の腕はたいしたことないが、口先が上手く、人を騙してはなんとか日々を生き延びている。そんな彼をアニキと慕い着いてくるキンタは、頭は悪いけれど剣の腕はすごい。ライは争いになるとキンタの力を借りていた。
ある日、朧の森、と言い伝えのある森でライは朧たちに出会い、その命と引き換えに王にならせてやろうという誘いを受ける。ライは「ならば、自分で自分を殺すその時はこの命くれてやる」と契約を結び、人を騙す舌と同じように良く動き人を斬る刀を手に入れる。
そして朧たちの言うようにエイアン国の将軍を斬ったライは、オーエ国の女首領シュテンを騙し、自らをエイアン国の将軍だと偽る。エイアン国を中から崩して滅ぼしてみせる、というライに、シュテンは血で義兄弟の契りを結ぼうと持ちかける。それは恐ろしい呪いの血人形だった・・・。
エイアン国に戻り、その口先でエイアン国の女将軍ツナに取り入り、さらにイチノオオキミの妾であるシキブをもたぶらかし、どんどんのし上がるライ。その裏ではエイアン国の裏社会を仕切るマダレと通じ、ライの描いたシナリオ通りに次々と将軍たちを滅ぼし、ついには自ら王となる。
ライはオーエ国討伐の際にはシュテンと再び対決、騙されたと知ったシュテンは血人形でライを倒そうとするが、実はその血人形に付けた血はキンタのものだった・・・キンタは目を潰され、ライに裏切られたことに気付き、瀕死の状態になる・・・。
ツナは王になったライに疑いを持ち、ライに従うかのように見せながらライの悪事をかぎまわる。シュテンから夫を殺したのがライだと聞き、ライへの復讐心を募らせるが、ライに見つかり、いたぶられる。その様子を見ていたマダレだが・・・。
王にはなったが徐々に味方を失い、自らを追い詰めていくライ。契約どおり、自らが自らの命を絶つことになるのか・・・。

どこまでどう書いたらいいのかわからない・・・。書きすぎ?まあここに辿り着く人はそんなにいないでしょうからいっか(^o^;

お正月にしてはめちゃくちゃ重いんですけど、途中本気で「えぇ~そこまでするか!」とも思ったけど、でもなんか色々な真理が含まれてるんですよね。
ライの運命だって、始めはちょっとした小悪党だったのに朧たちに出会ってしまい、王になれるとかそのための力を手に入れてしまったことであそこまで落ちてしまったのかなあ、とも思う。その辺はマクベス夫妻と近いかな。
ライの言葉はウソでいっぱいだけど、時折発せられる真実に思わずはっとさせられた。
ツナの憎しみにをいっぱいに受けながら、その憎しみが彼女の心を満たしている、彼女の心は自分のことでいっぱいであることを指摘し、それをも自分の喜びとする。愛憎は表裏一体ってことか。何か一つのことに一生懸命な時は、その対象に心が奪われていることになるってことか。
信用という言葉に対するライの台詞も、突き放しているようで彼自身は自分自身しか信用していないってことだろうかと。人を信用するには覚悟が必要だなと。

キンタが、いい。バカで状況が読めないけど、アニキへの想いはいっぱいで、目の前の事柄に一生懸命。それが真実かどうかはわからなくても、キンタにとっては全てが真実。
シュテンが欲しいと、ライに一生懸命なキンタ。ライの「お前だけは騙さない」という言葉を信じ、「俺はバカだけど、だから人のことを絶対バカにしない」という彼なりの正義はしっかり持ってる。
そんな彼へのライの仕打ちが始めはほんとにどーんと重かった。目を潰されて転げまわり、ライの仕打ちを知ったキンタの心中が痛くて痛くて。
でもその後再登場したキンタは、色んなことを悟ってる。目が見えなくなったことで人の心が見えるようになった、という彼は人の心を翻弄して騙していくライとは逆に、人の心を読みながら世間を泳ぐようになったんだろう。それでもキンタはライのことをアニキ、と呼ぶことをやめない。そして自分自身でライとの決着を付けたい、ライの所業を正したい、または殺してでもライを止めたいと願ったんじゃないかな。キンタにとってライは憎くてもやっぱりアニキだったのが、とてもキンタらしくて嬉しかった。
再びライに会ったキンタは、ライが自分のことを無意識のうちに助けていたことを指摘する。思ってもみなかったその言葉に動揺するライ。ライ自身、人を騙すことは考えていても自分自身が気付かぬうちに自分を騙していたことになる。そしてその言葉を逆手にとってまたキンタを騙そうとするけれど、自分が考えたウソじゃない真実から、ウソは作れなかった。キンタの「もうアニキの言葉が響かない」という台詞が印象的。
ラスト、ツナ、マダレ、キンタの3人でライと対決したけど、ライを取り逃がした後の「アニキは生きてない」ていう言葉の意味を掴みかねている・・・あれは、シュテンの最期の血人形の呪いが実は効いていて、でもライはそれに気付いていなく、怨念だけで生きているんだろうか、とか。そもそもシュテンの呪いは効かなかったのかどうかもわからず。でもパンフによると、「呪いが死ぬ」みたいなことも書いてあったのであそこはその暗示?呪いとか呪術とか妖術とかそういう目に見えぬものが通用する世界が終わる、てことかしら・・・だとしたら、そういうのがいっぱい登場する中島さんの脚本らしからぬシニカルなメッセージだなあ。

マダレは、途中までライと対等かと思っていただろうけど、(実際始めはライがキンタにマダレがアニキだ、て説明してたし・・・)ライの悪事をひたすら手助けしていくうちに、その関係が変わってしまったことに気付いたんだろうな。というか、マダレはライの一番近くにいたからこそ、その危険さに気付いたわけで。
途中で蛇の刺青をライが指示したところで自分の腕を押さえてたから、あ、これはほんとにマダレの腕に刺青があるってことだな、と思ったらやはり。意外とべたに「妹を目の前で殺されるのは」て台詞もあったけど、単純に実はいい人でした、て訳でもなく。そもそもその前にライのキンタへの仕打ちを見て若干引いてたから、ライへの忠誠があったわけじゃなく、自分がオイシイからライにつるんでたんでしょうね。
それにしてもちょっと見せ場が少ない・・・。後半もっとライと対決して欲しかったかなー。

ツナは、キンタとは違う意味で真っ直ぐで正義の人。ライを信じて重用してるあたりは本当にライへの信頼が強かっただけに、どんどんのし上がっていくライに戸惑う。途中、こちらも思った「だんだん態度が対等になっていくね」という台詞が、ちょっと寂しそうに聞こえた。確かにライはどんどん尊大になっていくし、その癖ツナへの愛情表現はどんどん増していくんだから、始めは自分を慕ってくれていた彼の変化にツナはついていけなくて戸惑うだろう。でもそれでも正義を失わず、自分を見失わなかったツナがかっこよくて潔い。
でも、そうなるとツナがあれだけ強い芯を持っていたのに、何故ヤスマサが国を売ろうとしたのかが気になる。一応後半の手紙で国が腐っていることを憂いているのはわかったけど、もうちょっとそこに説得力が欲しかった。だってライが来る前はそれほど国が腐ってるようには見えなかったよ??

シュテンも自分の国を守るために必死。でもあの血人形の呪いを使ってしまうところは、彼女は彼女なりにやりすぎだったと思う。国を守るためとはいえ、ね。ライのウソとたいして変わらないじゃないか。ただ彼女よりライの方が一枚上手だっただけ。そう考えると彼女がかわいそうと単純には思えないし、ツナにライの悪事をばらした時も、ライの言う通り、ウソはついてないけど、隠していた真実もある。人間、誰しも自分の正義があり、自分の手段があり、そしてウソとはいわないけど、人に言わないことで人を操っている時もある、てことだろう。実際ツナはヤスマサがシュテンと通じていたなんて思いも寄らなかったわけで。
最期は自分の身体を使ってまでライへの復讐を果たそうとするシュテン。でも彼女の復讐は国の復讐?それともライ個人への復讐か。結局彼女の最後の血人形の呪いは効いたのかどうかちょっとわからなかった。

シキブとイチノオオキミの関係が、切なかった。始めは単なるお遊びシーンかと思ったけど、シキブがツナのことを「だーいきらい!」と言ったあたりからそこに渦巻く感情が見え隠れし始めて。
シキブは自分では何の力も手段も無いけれど、イチノオオキミの妾になることでそれを手に入れた。そして親友であるツナが、自分にはないものを持っていることに嫉妬したんだろう。ツナのものを自分のものにしたくて仕方が無かったのかな。そして、誰かの力と誰かの愛情に縋らなければ生きていけない「女」だったんだと思う。
イチノオオキミも、単なるのんびり王様かと思ってたけど、最期のシーンで、シキブに歌をねだってるところでは、シキブの寂しさも知ってて、でも自分をばかにしたりすることでシキブの気持ちが晴れるなら、と思ってるんだろうな、と思った。こんなにも愛情たっぷりじゃないの・・・。そして、毒を入れたお酒を飲ませようとするシキブ、でもそれをじっと見つめちゃう辺り、シキブの弱さが現れてる。そんな彼女に「シキブはいっぱい恋をしたらいいよ。でもね、あの男はやめておけ。これ、飲むから。やめておけ。」というシーンがもう切なさいっぱい・・・。
でも、結局殺されちゃったシキブ。彼女の所業を知ってか知らずかはわからないけど、「あの子は自分から死ぬような子じゃない!」と言い切るツナにも、シキブはちゃんと理解されてたんだな、と思う。ツナがそんな風に思っていたシキブなら、もっと別の生き方もできたんじゃないかなあ・・・。

役柄&ストーリー的感想はこのくらいで。で、わからなかったのはライの最期が、どうなってたのか?滝の中に自分を沈めて雷かなんかに撃たれたの?なんか叫んでたのも半分くらい聞こえなくてわからなかった・・・。
シュテンの最後の血人形の呪いは結局かからなかったってこと?
でもキンタの言葉によるとあの時ライは既に「生きて」いなかった、怨念だけで動いていた、ことだからシュテンの呪いで死んだけどそれを受け入れていなかったのか?
次に行く時そこらへん良く確認しないと。

それにしても、物語の構成が上手いです。隙が無い、無駄もほとんど無い。血人形のカラクリなんて、そういわれれば、冒頭の争いでキンタがちょっと負傷して、財布をくすねたのがライにばれて渡したら財布が血で汚れてた、そして血人形の契りを結ぶ時、なんか懐に手入れてた、と思い出せばなるほど!な伏線。キンタが生きていたのも実はびっくりした。あれで終わりじゃサダヲさんもったいないー!と思ってたら、いい意味で裏切られました!!
まあ、蛇の刺青の展開は結構読め読めだったけど、それはそれでいいかなと。
意外に、ライとシュテン以外の主要登場人物が生き延びてるんですね~。

色々台詞や動きに伏線があるんだろうなと思うので、今後の観劇でその辺踏まえて見てきたいです。というかあまりにも騙しの連続で話が既に混乱し始めてるところもあり(^o^;

長くなったので演出衣装照明その他は別記事へ続きます。
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by yopiko0412 | 2007-01-03 15:23 | 演劇  

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