『トーチソング・トリロジー』

2006/12/2-18:00開演 PARCO劇場

PARCOのやけに気合の入った前振りに惹かれてチケット取りましたが、これは大正解でした。色々書きたい事が山積みでついつい後倒しになってる内に終っちゃった・・・。
3編のオムニバス、かと思いきや、しっかり話は繋がってる3部作ってことでした。



【アーノルドとエド】
ゲイである事を隠さず、女装して歌うアーノルドと、学校の先生という職業もあり、男性だけでなく女性とも付き合う、そしてその事を隠しているエド。
アーノルドはエドの愛情を求め、アーノルドのオープンな愛情を受け入れる事が出来ないエドは困惑する。その上、知人から紹介された女性と付き合い始めたエド。その事を知ったアーノルドはエドがエド自身を偽っている、ゲイであることを認めないことを非難し、二人は分かれる。それでもアーノルドはエドのことを想っていたが、数ヶ月経った頃に突然現れたエドは、自分が犯した過ちを誰にも相談できずに悩んでいた。

アーノルドがほんとにきれいでかわいらしい!!篠井さんの身体の動かし方は、手先まで気が配られていて、とてもしなやか。そしてちょっと上目がちなところや、膝を揃えてちょこんと座る仕草がとってもいじらしくて、ついアーノルドに肩入れしちゃう(笑)
真っ白なうさぎのルームシューズがキュート♪

対してエドはザ・男な感じで、アーノルドをうっとおしくあしらう様子なんか、あれは対男性でも女性でも変わらないんじゃないかと。
でも、最後に麻薬に手を出してしまった自分に打ちひしがれ、アーノルドにしか打ち明けられない心を明かしたシーンのエドは情けなくて、でもそこでアーノルドに打ち明けられた事が彼の救いだと思ったり。

舞台は暗め、一段高いところにピアノが配置され、トーチソングの生歌が。劇中ピアニストとエドが絡んだりもして、効果的。
そして、舞台はほぼ二人による一人芝居状態、アーノルドの楽屋、部屋と二人がであったゲイバー、そしてエドの部屋を可動式のミニ舞台の出し入れ、そして電飾と照明の効果だけでどんどん場面転換、かっこいいなあ、スズカツさん!!

【アーノルドとアラン、エドとローレル】
休憩を挟んで、開演前に、前段とも言える電話のやり取りが。エドのフィアンセローレルが、エドと過ごす週末にアーノルドを誘う電話。乗り気でないアーノルドだけど、そこに「俺行きたい」と入る声・・・。
そして、エドとローレルの週末に、アーノルドとその新しいボーイフレンド、アランが加わる。ローレルはエドとアーノルドをことを知っていて、アーノルドと対決するつもりで、アランは、アーノルドの元彼エドがどんな男か、そして自分の方がアーノルドを愛しているし、アーノルドも自分を愛していると確信したくて。エドにとってはアランは想定外、アーノルドとローレルが仲良くなってくれて、自分も二人と楽しく週末を過ごしたかっただけなのに・・・。みんなそれぞれの想いを抱いて集まった。

自然の中の、大きなベッドを舞台に繰り広げられる、愛を語る丁々発止!元恋人同士が、現在の恋人と集まる、修羅場的シチュエーションは、まさに修羅場。
エドはアーノルドの新しい恋人アランに嫉妬心剥き出し、それをローレルに言っちゃう辺りがわかってないというか自分に素直すぎるというか、憎めなくもなってしまう。そんなエドを諌めて自分の方を振り向かせようとするローレル。
彼女もまたアーノルドとの対決を図っているのに、当のアーノルドはそんな気は無い様子で、いらいらが募る。そしてアーノルドを傷つけたくて、エドだけではなくアランも奪ってしまおうと考え、アランと関係を持つ。
アランは、この週末でアーノルドとの愛を確信するつもり。アーノルドにしきりにエドを本当に愛していたのか、問いかけ、嘘だと断言する。自分の方がアーノルドを愛しているし、アーノルドも自分を愛しているはずだと。そしてアーノルドとの愛のために、エドと関係し、さらにはローレルとも関係する。そうすることで、アーノルドを傷つけた二人に復讐できると考えて。

そんな彼らは、いつでも二人ずつでしか会話しない、場面に存在していても、それぞれ二人ずつ。だけど二組の会話が時折入れ替わり、交錯し、時間を同じくして複数の愛が語られていく様は圧巻。ついていくのが大変だけど。
最後には、ローレルは結局自分が傷つき、傷つけたかったアーノルドに、自分の悩みを相談し、エドとの愛に涙し、アーノルドは淡々と彼女に言葉をかける、そんな不思議な関係。
結局それぞれの愛に苦しみ、傷ついて本音を語り、アーノルドはアランと、エドはローレルとの未来へ進み始める。

第2部に登場のアランとローレル。
アランの長谷川博己さんが目を惹きました。今回の収穫☆といっても初見ではなく、『KITCHEN』にも出てたみたいだけど・・・あれは私がダメだったので印象なし(汗)
背が高くて身のこなしがとてもキレイ。ちょっと生意気な口の利き方をするのも、劇中のアランの、年下だけど背伸びしてアーノルドと対等に愛し合いたい、そして大人なエドにも対抗したい心情がよくわかる。目線でローレルやエドと渡り合い、アーノルドに情熱的に迫るシーンは優美でかっこいい♪もうちょっとセリフっぽさが抜ければ尚良しかと。今後もちょっと注目したいですね~!
ローレルは奥貫薫さん。こちらはザ・女だった。愛する男性の元の恋人(それが女性であろうと男性であろうと)と真っ向から対決して真実の愛を得ようとする、そのためには何でもする女。

舞台は大きなベッド。ベッドという安息の場所であの愛情劇が繰り広げられるのが秀逸。これはきっと戯曲に書いてあるんでしょうね、パンフの初演の写真にもベッドのシーンがあったので。
てかあのベッドのシーンの段取りがものすごいんですけど!!セリフも色んな会話が交錯するし、ベッドの上を上下縦横ひたすら動き回り、枕とシーツも駆使する展開がドラマティックだしスタイリッシュ。
ここでも、ベッドサイドのランプの効果でその場面の主になる部分を現してしまう演出。これまたかっこいい!

【アーノルドとデイヴィッド、エド、母】
結構大々的にセットチェンジしてる音が、と思ったら、いきなり白い壁に囲まれたリビングルーム、窓に見えるのはマンハッタン?!
また一気に年月が飛んでいて、観客は彼らの会話の中から色々な事実を知っていく。エドとローレルは結婚したが別居状態で、エドはアーノルドの部屋に居候、アーノルドはデイヴィッドという高校生を養子に取っていた。そしてアランはいない・・・。今日はアーノルドの母がやってくるというが、アーノルドはナーバス。その理由は?

前の2部を受けての第3部は、アーノルドと母の親子愛の圧巻!アランが出てこない(というか死んでる!)ことに軽くショックを受けたけど、そんなの忘れてしまうくらいの愛情の応酬にただ涙。
アーノルドは、ゲイである自分を認めない母に苛立ちを感じている。でもそれは、なんとか認めて欲しい、愛して欲しいという強い想いの裏返し。でもそれを表現する事が出来ない。
母は、自分の息子が思ってもみない息子に育ち、自分が当然だと思っていた「夫婦と子供」の家族愛を息子にも理解して欲しいと願っている。
どこまでも平行線なんだけど、デイヴィッドは二人がそっくりだと言う。それは二人ともお互いに愛しているからこそ認めて欲しい、理解して欲しい、自分の想いを伝えたい気持ちが強いということ。
「私は自分で自分のことは何でもできる、私に必要なのは私に愛と尊敬を与えてくれる人だけ。そうじゃない人は私の部屋(人生)から出て行って!」というアーノルド。
「お前なんか産まなければ良かった!」とつい言ってしまう母。そしてその自分の言葉に驚愕し、深い後悔に包まれる。
そして、何もかも話していたはずのアーノルドが母に隠していたアランの死の事実。アーノルドもどこかで正直になれなかったんだな、と。母に受け止めて欲しいと思いつつ、きっとわからないだろう、だから言えない、でもそのために母には真実が伝わらず、結果やはり理解を得られなかった。切ない堂々巡りです。
でもそんなアーノルドが全てを明かし、「慰める事が出来たかもしれない」という母に「アランが恋しい」と、今の、生の気持ちを吐き出したときの母の言葉、あれは、一人の人間として、愛する人間を亡くすということの辛さ、残された者の生きる術を、息子に教える言葉でした。あの言葉は、アーノルドがゲイであることを超越した部分にあるのかな。

エドとアーノルドは第1部とはすっかり変わった関係に見えるけど、もうお互いのことがなくてはならない存在になっている。特にエドは自分が本当に愛しているのはアーノルドだと気付き、カミングアウトも決心してアーノルドに愛を伝え、デイヴィッドと3人で家族になりたいと言う。アーノルドはアランを失った悲しみとは別に、エドのこともデイヴィッドのことも愛しているし、家族になりたいと思っているのにこれまた素直じゃない(笑)
この3人の関係性の中でデイヴィッドは本当にアーノルドのことを理解していて、エドのこともすっかりコントロールしちゃって、一番大人なのはデイヴィッドかも。でも彼もアーノルドの頑固さと、一途な愛情を知ったからこそ、なんだよね。それまでは続かなかった里親も学校も、アーノルドの愛に触れて前進したんだから。

ラストは、アーノルドの部屋のリビングはなくなって、真っ暗な机と椅子以外何も無い舞台で、ピアノのトーチソング。そこに佇むアーノルドは充分な愛を与え、受ける事が出来ていたのか・・・。
劇中、アーノルドが言う「愛していた、でも、充分じゃなかった」て言葉が痛い。誰かから愛されたければ、まず自分自身を愛さなければいけないと。でもそれって難しいよな、とか考えながら。

3部全部の、舞台装置とか演出の印象ががらっと雰囲気が違っていて、しかもそれぞれ手法が違えどもとてもスタイリッシュで効果的。こういうのいいですねー。
これ、もう一度観てみたかった。話を知って2度目に観ればまた色々感じるだろう。特に2部の会話の交錯はもうちょっと深く踏み込みたい感じ。DVD出ないかな?最近PARCO作品のDVD化もコンスタントなので(『噂の男』も欲しい!てか本編より副音声が魅力的(爆))、期待しておきます。あと、映画も観てみたい。

「新」スタンダード・シリーズと銘打ってるけど、こうなると次の『フールフォアラブ』も俄然気になってきますが・・・主演の寺島さんに食指が動かなかったのよね~。
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by yopiko0412 | 2006-12-13 20:35 | 演劇  

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