『開放弦』

2006/7/31-17:00開演 PARCO劇場

出演者と、演出家に惹かれて観に行きました。あと、脚本も見知ったお名前(ていうか無意識に観てる可能性もあるし)でしたし。
チラシの文言や、キャッチコピーなんかから想像していたのとはちょっと違ったような、でもなんか観終わってみたら「あぁ、そういうことだったのか」と納得しました。だいたい、「開放弦」という言葉すら知らなかったので(汗)




淡々と、本当に淡々と、一場面だけで、会話だけで繰り広げられるストーリー。ストーリーというか、彼らの人生の長い時間軸の中の、ある一部分を切り取って見ているような感覚。彼らの、舞台にあった時間の前後にあったであろう時間まで見える、そしてそれがとても自然に表現された、丹念に構築された世界でした。惜しむらくは、ちと長いこと・・・あと、こういう構成のため、冒頭では彼らの置かれた状況や、なぜ彼らがこういう言動をしているのか、がわからなかったこと。
わかってから、彼らを取り巻く状況が刻々と変わっていく様は、どんどん引き込まれました。最後は、ハッピーエンドじゃないのがとても哀しかったけれど・・・あの流れでキレイにハッピーになってしまっては、出来過ぎなんでしょうね。そして、最後の最後、じんわり染みる切なさの余韻が残りました。

何と言っても、『開放弦』の意味がわかった瞬間の、あの空気。遠山君のお葬式でも、みんな達観したような雰囲気で涙もなかったのに、恵子さんが開放弦を弾き、意味が分かったあとの依代の「あ・・・」という声にもならない声、ぎゅっと顔をしかめて背中を向ける門田、それでも一心不乱に弾き続ける恵子。その中で、遠山が残したギターの音が響くエンディングに、静かな、涙以上の、感情の揺れを感じました。

登場人物は、みんな何かしら背負ったものがあり、事情を抱えている。そして、そんな彼らのやり取りはとても危うくて、それぞれ言葉を選び、飲み込み、省略し、深読みし、誤解していく。そこに見え隠れする色々な感情の交錯は「あぁ、もうはっきり言っちゃいなよ!じれったいっ!!」と思うけれど、でも実際誰もがこういう経験はあるだろうし、そうしないと生きていけないのも事実。みんな何かを守りたかったり、何かが恐かったりしてるんだよね。それが、恵子が言う「だって、好きだったときのことを思い出して、また好きになっちゃったら・・・」という台詞にも現れていて、遠山も素直に表現できなかったけど、恵子もそれを受け止めて表現する事ができなかった、彼らはお互いに歩み寄る一歩を踏み出せずに、わずかに一緒に音楽を奏でることで心が触れ合い、そしてそのまま終わってしまったんだなあ、と。
でも、常に遠慮がちだった二人が、たどたどしく共同でギターを奏でるシーンが、いい大人なんだけど、すごく少年少女のようでかわいらしく、純粋に見えた。

もう一つ、影でこの舞台を引っ張っていたのは「くいしんぼう」の存在。舞台上には基本的に登場しないけど、冒頭の説明が全てで、遠山の人生はくいしんぼうに振り回され、くいしんぼうによって絶望や悲しみや苦しみ、その中の一筋の光がもたらされ、そして彼の命も奪われた。くいしんぼうのモチーフが幕間に舞台上にでーんと居座っていたけど、あれに意味はあったのかなあ?

登場人物は7人。この人たちがみんなバックボーンを持っているし、キャラが一定でバランス良かった。
しかしてっきり大倉孝二さんと水野美紀さんが夫婦かと思ったら、違ったんですね~。そうは言っても、大倉孝二さん演じる門田が色んな意味で舞台を引っ張っていた。彼だけは首尾一貫してたんですよね。で、彼だけはきっと遠山と恵子の真意を察知していて、だから心配もするし、「とりあえず1回離婚しろ!」と言ったんじゃないかと。
それにしても大倉さんは不思議だ・・・すらっと長い手足を駆使して動く動く!そして「行き着くところはベースだった」みたいな哀愁も感じさせ、でもウェットになりすぎないし、真剣だからこその笑いのシーンもたっぷり♪
どうやら舞台では語られなかった設定で、カモ農法を遠山に教えたのは門田だったと。おぉ~!だからか、必要以上に遠山に一生懸命なのとか、ネット配信に関心が無さそうだったのとか!単に詳しくないからだと思っちゃってたよ・・・そういう裏設定も分かって見るとまた違いそう。

水野美紀さん、好きなんです。なんだろう、あのさっぱりした感じとかかなあ。しかし最近ちょっと太ったでしょうか?いや、キレイなんだけどやけに上半身ががっしりしてる気がして。身体鍛えてるからかなあ。
恵子は、初めからなんか違和感があって、なんだろう?と思ってて、会話の中の「~だわ」とか「~かしら」という語尾が空々しい印象だったんです。でもそれが、みんなに気を遣ってる感じなんだとわかるのは、所々に恵子の素っぽい部分が見え隠れするから。「鳥」「カモ」のやり取りとか、「バウマク」に反応した時とか、木戸や基江と格闘してる時なんかは素の恵子だったんだろうと思います。そういう緩急が不自然でなくてよかったです。
遠山への気持ちはあったけれど、お葬式で無闇に泣くわけでもなく、遠山とのことを淡々と語る口調が却って最後の開放弦を印象付けたなあ、と。

遠山の丸山智己さんは初めてでした。すらっとした立ち姿と、どこか朴訥とした雰囲気がぴったりでした。ぎこちない愛情表現、どうしようもないことを受け入れたようだけれど、でも諦めてはいない、くいしんぼうに対する時だけは後先考えないくらい頭に血が上ってしまう青年、押さえた演技だけれど、周りの出演者に埋もれることなく遠山と恵子の愛情をきちんと見せてくれたなあ。

遠山の元彼女で、遠山を取り戻したい依代は京野ことみちゃん。吉原御免状でも見たけど、今回見てもやっぱりすっごい声が良く通る。良く通るんだけど、なんかちょっときんきんしてるような・・・もうちょっと強弱というか緩急が欲しい気もしなくもないかな。でもラストの「あ・・・」はほんとに、声ともならない声であれはよかった~。
河原さんの進藤は、なんかもう怪しいんだか一生懸命なんだか紙一重な人なんだけど。奥さんへのコンプレックス満載で、キレイな恵子についぐらっとしちゃうんだけど、でもやっぱり奥さんが大事で。奥さんの犬山さんがこれまた全然嫌味の無いかわいいおばちゃんって感じで、事情はどうあれ旦那さんと一緒にいられることを幸せに感じていて。でも旦那さんが恵子にぐらついてることに爆発しちゃって恵子と取っ組み合いするシーンはお二人とも体張ってた。てか結構体格差・体力差ありそうだけど、犬山さん大丈夫なんだろうか(笑)
この夫婦に割ってはいる編集者の木戸は、伊藤正之さん。割ってはいるっていうか完璧なる勘違いなんだけど、頼られちゃったら嬉しくなっちゃって恋愛感情と間違っちゃう、これまた違う意味で不器用な大人なんだろうなあ。自分の勘違いに気付いたらすっかり普通に戻っちゃったし(爆)
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by yopiko0412 | 2006-08-04 23:04 | 演劇  

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