人気ブログランキング | 話題のタグを見る

『OUR HOUSE』

2006/6/30-18:30開演 新国立劇場中劇場

G2でミュージカルでアッキー、なるしー、大王出るし、てことで色んな要素複合で観てきました。ストーリーはさておき、観たい人が多いので目移りしちゃった(笑)ちなみに観に行ってからチェックしたのは新納さんですが。




お話は、ジョー・ケイシーというアイルランド系(多分)の少年が16歳を迎えたところから始まる。大好きな彼女サラとの未来に希望を膨らませていたジョーだったが、彼女を連れて立ち入り禁止区域に侵入し、警察に追われる。その時、逃げようとするジョーを、サラは逃げるべきではない、と諭すが、聞かない。ジョーの死んだ父親も現れ、逃げてはいけない、正直に話すべきだという。ジョーの父は「どうなるか見せてやろう」と、息子を逃げたジョー(悪いジョー)と逃げなかったジョー(良いジョー)に分けて、二つの人生が分かれて進んでいく。
逃げたジョーはサラに軽蔑され、学校の悪ガキ、リーシーの誘いに乗り、学校を辞めて悪徳商法に手を染めていく。逃げなかったジョーは少年院に送られ、更生して働こうとするが、少年院に入っていた、というレッテルのせいで思うようにいかない。二人のジョーの人生は平行し、時折交わり、を繰り返し、一見すると、逃げたジョー(悪いジョー)の方が順風満帆に見えていたが・・・ジョーの母が大事にしている家の立ち退き話を境に、悪いジョーには最悪の結果が、良いジョーには穏やかな結果が訪れることになる。

いくつか突っ込みどころもあり、文化的社会的背景がわからないと不明な部分もありましたが、まあストーリーは上手く組み立てられているなあ、と。二つの人生が、悪が善に、善が悪になり、善悪は紙一重、てなことも盛り込まれていたのかと。
流れはある程度予測できちゃうものだったけど、ラスト前、ケイシーストリートの燃える家の前でのシーンにはぐっときた。ジョーの母親キャスの「お前の無事をお祈りしに教会に行っていた。」「お前はこの家に帰ってきたんじゃない、私のところに帰ってきたんだろう?」の台詞にやられました。その前に、教会で「私は何か悪いことをしましたか?夫も息子も、刑務所に入って、そのまま帰ってこない・・・。」みたいな伏線もあり、どうやらジョーの親友二人も、元々は孤児で、キャスが引き取って育ててたらしいし、「OUR HOUSE」は「みんなの家」じゃなくて「みんながいる場所」なんだなーと。ベタですが。
ああ、ちなみに歌詞が聞こえてなかったので、主題歌「OUR HOUSE」の訳詩がそういう意味合いになってることは後から知りました。

あと、秀逸だなと思ったのは、二つの人生の中で同じ台詞が違った意味合いで使われている、その対比。サラの言う「たとえどんなに愛していたとしても、イエスと言えない時もあるのよ。」がとても効果的で、同じ言葉でも、場面とその気持ちの込め方で180度違った言葉に聞こえる、対照的な台詞として印象に残ってる。

キャストそれぞれ。
ジョーは2役と言えるかな、中川晃教(アッキー)の頑張りは見えます。が、ちょっとやっぱり演技力という点では物足りなかったかなー。SHIROHのライブCD聴いてても思うけど、どうも歌じゃなくて台詞の部分が力んでいるというか、意気込んでいるというか、そんな印象。でも良いジョーのおどおどしたところや不安感に苛まれるところなんかは、ほんとに無力な少年のようでした。
しかし彼の魅力はやっぱり演技より歌な訳で、そういう意味では色々と思うところが・・・これは後でまとめます。
それにしても、ビジュアル的にも16歳がまだまだ無理が無いのがすごい。
ちなみに早替えが何度もありましたが、あの白いジャージはなんかだぼっとしてたし、黒いスーツはやけにぴったりしてた、てことはあれ中に着てる?んだよねえ?で、舞台上でフェイクジョーをやってたのはどなたでしょうか?背格好が似てなかった・・・もうちょっと似てる人選して欲しかったかなあ。
ネタかアクシデントか、冒頭いきなり靴脱げてました。履くのに苦労してもたもたしてて、その後のシーンでもやたら靴ネタが多かったのでアクシデントでしょうね(爆)

ジョーの親友二人は、キャラ的にもストーリー的にも色々美味しかったですね~。
エモの坂元健児さんは多分アンジョルラスで観てるはず。今回はボケキャラ&なぜか体力勝負(笑)声が良く通るのか、そんなに声を張ってないボケもいい感じに抜けて聞こえてよかったです。おんぼろカーでのドライブシーンではせっせと車の向きを変える役目。なぜ一人で?(笑)
あ、ここで「力持ちの人呼んで来ようか」「ジャン・バルジャンって人がすごいんだって」「あ、俺その人知ってるかも」「えー?携帯の番号知ってる?」「えっとねー、090の・・・24653!」なんてネタがありました。レミゼ知らないとわからないけど、私は面白かったよ☆
ルイスの新納慎也さんは、お初でしたが、今回の収穫だった♪歌はちょっとしかなかったし、そもそも音響があれだったんでわからないけど、姿と演技とダンスだけでも充分目を引きました!まあ、役(台詞)が美味しいのでその分良く見えるってのもあるとは思うけど、主役を支える役どころ、ジョーへの気持ちや、何よりもキャスを先頭とした「OUR HOUSE」(みんながいる場所、の意味で)への気持ちとか、痛々しい表情に惹き込まれてしまった。ダンスは元々お得意のようですが長身で手足も長くてキレイな体型してるので舞台でも目立ちますね~。骨太なサカケンさんとのでこぼこキャスティングの妙も当たりかな。
ちょっと調べたら年上で(というか30台で)びっくりした!ゼンザの泉見くんの時と同じだ・・・舞台ってすごい!先入観って恐い!!(爆)

なるしーさんは1幕で飛ばして2幕はほぼお休み?もったいなかった・・・でも充分面白かったので笑わせてもらいました(笑)
登場した途端、「俺達16歳じゃん?」で一瞬の間、会場爆笑でぎろっと睨んで「何か(文句でも)?」でさらに爆笑!アッキーほか出演者と同じ黄色のブレザーの制服着て激しく歌い踊る・・・お疲れでしたか?(汗)
ガソリンスタンドに来たときは、ニモとルイスに向かっていきなりの「誰がスーパーサイヤ人だって?」で「カメハメ派ー!」ニモとルイスは尻餅ついて後ずさり、を2回やって満足そうに「いい反応だ!」て思いっきり楽しんでるなーと(笑)

大王は相変わらず大王でした(爆)変わらないなーと。一人でぺらぺらとまくしたて、秘書の人をニューハーフに仕立ててしまってました、彼女、確かにでかいし男顔でしたけどね~(笑)

サラの池田さん。私観たことあるかなあ??ちょっと貫禄のある16歳だった・・・。サラのキャラがとても平凡でこれといって特徴が無いと感じたんですが何故でしょうか。サラの友達二人(入絵さんと瀬戸さん)の方がぶっとんではいたな。ぶっ飛んでただけでたいした魅力も、特徴もやっぱりなかった・・・。
ところで冒頭、ジョーと付き合うサラに二人は「あんなのやめとけ」という感じだったんですけど、なんで?アイルランド系だから?そしてサラだけ優秀(?)で大学に進んで皆とは違う世界を知るのは何故だろう?

そしてジョーの両親。
前述したぐっときた母親は香寿たつきさん。若いお母さんだけど、パワフルでおおらかで、子供達や周りの人から慕われるのが良く分かる。その上夫や息子への無償の愛情が大きくて、だからこそあの場面がとても温かい。
お父さんは今井清隆さん。ジャン・バルジャンはこの方では見てないのですが、歌がうまいと聞いてたんだけど・・・曲が合わないのかなあ?役として、舞台上にはいるけど、それこそ誰にも存在を認めてもらえない、誰とも交わらない役なのでどうしても出てくると唐突感があってもったいない。ストーリーテラーのような、でも彼自身も途中から良いジョーと悪いジョー、どっちがいいのかわからなくなってたりしてるので、そこまで上から舞台を見てる人ではないんですよね。

あと、ピンポイントで面白かったのはサラの彼氏、カラム。わかりやすくキルトを履いたスコットランド人なんでしょうけど、妙に自信たっぷりな笑顔とか、場の空気の読めなさとか、ちょこちょこ面白かった。で、この人が小鈴さんなんですね。ほー。
サラの事務所で部屋を出て行くとき、引くドアを押したようで、「あ、引くんだね」みたいなことを二人につぶやいて出て行った。ネタ、かなあ?それにしてはドアを押したジェスチャーがあんまり大きくなかったので、単に間違った?ネタならもっと大きくやることをオススメしますが(笑)

さてさて。ここからちょっと辛口。
今回、冒頭からちょっと舞台に入っていけなかった。なぜか?音響がちぐはぐで、台詞も歌もほとんど聞こえなかったから。
これね、舞台としてはもちろん、ましてミュージカルには決定的な致命傷でしかないのです。元々、MADNESSの音楽も知らないし、予習もしてませんでしたが、まあこの音楽はあんまり聞かせるミュージカルにはならない種類なので、その時点で無理はあるけど、それでもやっぱり台詞と歌詞が聞こえないというのは言語道断。マイクの調節もおかしいのか、初めの3人の台詞のやり取りとか、音量が大きすぎて逆にわんわん響いて何言ってるか不明。ネタがネタだけに(下ネタ)余計にさーっと引いてしまいました。
あとは、やっぱり早口というか、音と歌詞に無理があるんですよね、すんごい早口を聞いてる気分。聞こえるのはちゃんとした台詞とスローな歌のみでした。まあにぎやかな場面はだいたい楽しいんだな、そういう内容の歌詞なんだな、と想像して聞いてたからお話の理解には困らなかったけど・・・。

ミュージカル観に行くと、たいがい後から脳内で曲が回るはずなんだけど、今回はそれもあまりなく、残念。基本的にどんなジャンルでもリピートしない主義(除・新感線)なので、1回の観劇で、予習(ネタバレ)無しで観に行く観客ですから、その1回がちゃんと消化できないとすごく悔しい。

ちなみに、アッキーにはやっぱり歌い上げる曲の方が合ってると思います。というか、歌い上げるアッキーが観たかったのも事実。こういう楽曲を、歌というより喋りの延長のよう歌う歌唱法は、実は音が逃げてしまってアッキーですら歌詞が聞こえないこと多数。今井さんは明らかに曲が合ってないんだろうなーと思ってしまいました。もっとたっぷりした歌でこそ活きる声じゃないんだろうか。

あーやっぱり「和製ミュージカル」がいい!1音符に1音原則の日本語ならでは、のきちんとしたものを観たいなあ・・・。それこそ、ある程度の文化的、社会的背景も理解できるから、もっとぐぐっと世界に入り込むことができるはずなんだから。つくづく、『SHIROH』の挑戦のすごさを実感しました。

by yopiko0412 | 2006-07-03 21:46 | ミュージカル  

<< 『吉原御免状』DVD到着 『ヴァージニア・ウルフなんか恐... >>