NINAGAWA VS COCOON Vol.4『天保十二年のシェイクスピア』

NINAGAWA VS COCOON Vol.4『天保十二年のシェイクスピア』

2005/9/29-18:30開演 シアターコクーン

「こいつら、タダモノじゃない」な舞台でした、ほんとに(笑)日帰り出張の帰りに4時間観劇という自分のスケジュールに不安を感じてたんですが(汗)上演時間を苦に感じなかったです。(一部だれたところもあったけど。)
まず、なによりも、戯曲がすごい!シェイクスピア全37作全てを一本の戯曲の中に織り込んで、しかもきちんとまとまったストーリーのある作品にするなんて、すごすぎです!とはいえ、不勉強のため、当然全作品なんてわからなかったけど・・・それでも有名どころ、前に他の芝居で観たことのある戯曲、なんかがわかってただけでも、充分に楽しめました。いや、悲劇なんだけど、ほんとに「楽しんで」しまうんですよね・・・これも戯曲のもつ力だなー。
とにもかくにも、原作を読みたくなりました。そしてシェイクスピア全作品もわかればもっといいのに、と。戯曲に、詳細な解説付けたものとか作ってくれないかしら。て、もうあったらそれ読みたい。

ちなみに、ゲキ×シネSHIROHで買ったいのうえひでのり版は結局未見でしたが、これは観なくてよかったかも。やっぱり私は1回目はネタばれなしで観るのが一番いいと思うんです。近い内に、いのうえ版を観ようと思います。




演出に関しては、相変わらず蜷川さんらしさ満載でした。話題だったセット、開演前から幕は上がっていて、グローブ座を模したという豪華な舞台。2階建てになっていて、2階部分は通路のようなバルコニーのような感じ。舞台上には中世の衣装を着た人々が登場して動き回ったり喋ったりしている不思議な空間がおもしろかったなあ。一瞬、これ時代劇だよね?と自分の中で問いかけてしまったし(笑)で、1階部分の両端に太い柱があって、上手側の席だった私は「あれ邪魔だなあ」なんて思っていたら・・・開演と同時に客席から現れた(これはいつも通りでもう驚かない(笑))人足たちが歌いながら力強くセットを破壊していき、のこぎりでぎーこぎーことその柱も切り取っちゃった!これにはびっくりしましたよ~。ちなみに、このセット、最後にはまた元に戻しててこれも面白い演出だったなあ。
そういえば、この舞台、幕はまったく降ろさなかった。2幕目の前も、舞台上のセットに普通に次の幕の出演者がやってきて、笑ったり喋ったりしてたんです。衣装着てるけど役に入っていない役者さんを見せてくれる演出はちょっと得をした気分になりますね♪
あとは桜の花びらが散ったり、歌舞伎でよく見る後からの衣装の引き抜きによる早替わりがあったり、人形振りみたいな動きもあったり、ストップモーションがあったり、血飛沫が飛んだりと随所随所で魅せる演出。さすがコクーン4連ちゃんのファイナルだけありますね!
あ、それから、KITCHENで私の中で不満だった電光掲示板もありました。今回は歌が盛り込まれている戯曲なので、各場面の名称と、歌詞が表示されるもの。これはありでした。だって結構言葉遊び的な歌詞だったり、口語ではなく字面としてじゃないと意味の掴めない歌詞だったり、あとは聞こえずらかったりもしたので、歌詞がわかるのは大歓迎。でも場所の配置がダメでした。舞台が2階建てのため、舞台上ではなく舞台袖に配置されてて、そっちを見ると舞台が見えず、舞台を見てると歌詞がわからず、という状態になっちゃったから。まあでもぱっと見て歌詞を頭に入れて舞台に目を戻す、ていう見方をしたのでなんとかクリア。でもこの見方すごい疲れた・・・。
ちなみにこの電光掲示板、「歌詞間違えるとばれるから役者さんにはかわいそう」と思っていたら、きじるしの王次がやってくれました(爆)「それが問題だ」の歌だったので、ただでさえ歌詞が混乱しそうなのでこれは仕方ないかなあと。でも、あるフレーズの最後の歌詞の部分を間違って次のフレーズの歌詞になっちゃったのに、平然と次のフレーズを同じ歌詞で歌ってしまうその度胸のよさはさすが!と変なところで関心。自分だったら一度間違ったら軌道修正に時間掛かりそう(汗)

さすがにストーリー追いかけると大変なことになりそうなので、出演者を軸にします。

佐渡の三世次の唐沢さん
リチャード3世です、これはわかりやすい(笑)せむし姿に顔の左側は火傷メイク、足を片方引きずりながらの演技は相当大変だったんじゃないかと。唐沢さんの登場は1幕途中からなんですが、出てきていきなりパワー爆発のソロ。三世次の生き様や業をあの場面だけで表現してた。口が達者な役なので、早口で、でも小気味良い話し方も終始崩さず、登場人物がどんどん死んでいく中で最後の最後に破滅していく役は精神的にもタフでないと難しいですよね~。
基本的にいつもぎょろっと目を光らせていて、笑ってても本物の笑いじゃない三世次、2幕でお光に惚れたことをお里に感づかれて「あたしがあの子に言ってやろうか」と言われた後ににやっと笑ってお里を睨み付けるんですが、これ上手側の端、客席ぎりぎりのところでやってて、ちょうどよく見える位置で!ほんとに恐い、背筋が凍るような表情・間でした。さすがっ!
楽しかったのは、きじるしの王次のところに偽の幽霊を登場させて、お文と九郎次が父親を殺したことを告げる場面、ここは3人の掛け合いが見事でしたね~。悲劇なのに、笑いを盛り込んでしまう戯曲が際立ってた場面だと思います。
三世次は見せ場ってどこだろう?病気の幕兵衛にお里が浮気していると騙す場面、兄貴分の河岸安を褒めながら貶める場面、代官に捕まった牢屋での小判投げからお幸に自分を殺せと迫る場面、どこもかしこも「口が達者」な三世次満載で、そして唐沢さんは危なげないんですよねー。あれだけの台詞をこなすことができるのがすごすぎ・・・。
ところで三世次が破滅することになる鏡のシーン、『ラ・マンチャの男』を思い出しましたが、あれはシェイクスピアにもああいう戯曲があるのかしら?

きじるしの王次の藤原竜也くん
舞台で初見の藤原くん・・・はっちゃけてたなあ(笑)登場からして遊び人風で仲間や女達とよろしくやってる。歌はね、『赤い運命』で歌ってたのをちょっとだけ聞いてあまりのあまりさに爆笑したんで(爆)期待してなかったけど、まあまあだったのでは?
この人は、主にハムレットだったりロミオだったりっていう役。一部、『夏の夜の夢』で惚れ薬でパックにいたずらされる役とか。他にも混ざってたかな?基本線はハムレットでしたね。登場はあっけらかんとしたやんちゃ坊主だったんだけど、三世次の差し向けた幽霊から真実を知るシーンは前述の通りコメディ要素満載!演じてる方々は超マジメなんですけど、それがまた笑いを誘う。そしてその後の狂気を演じるところ、着物を着崩してシナを作って・・・女形ですか?!とびっくり(笑)(ここで「それが問題だ」の歌で歌詞間違ったわけですが、御愛嬌♪)
許婚のお冬の前ですら狂気を演じなければならないシーンが、酷いことを言えば言うほど辛そうに見えて哀しかった・・・挙句、お冬の父を殺してしまうとは。しかしそんなシーンもまた笑いの要素が。て笑いの要素はそこかしこにあるから(悲劇なのに!)、いちいち挙げてたらキリがないですね。
そして、これがある意味ものすごい見せ場なんじゃないかという、「生きるべきか、死ぬべきか、それが問題だ」ていうハムレットのあの台詞の色々な翻訳家の方の和訳を、年代を遡って述べるシーン。ここ、舞台の進行役である百姓隊の隊長木場さんとの1対1のやりとり。リズム良く、情感たっぷり、2人のやり取りに引っ張り込まれます。そして極シンプルな原語(To be or not to be、て意味不明!)だけに、翻訳にも色々な違いがあり、時代も反映していたりするのが面白かったです。翻訳によって受ける感覚が違うんだなあというのを舞台上で表現。すごい!で、最後は日本で一番古い翻訳、外国人が訳したのが「アリマスカアリマセンカ」とかなんとか(爆)ここまで息をもつかせぬ台詞運びだったのに、ここだけ藤原君、妙な外国人訛の喋り方で場内爆笑。いやほんと、戯曲と演出と演者がきっちり噛みあうとこれだけの場面が作り出せるんだ、という衝撃的なシーンかも。

※かなり長いのでここから先は簡易版で。後から加筆修正する・・・かも?

お光・お幸の篠原涼子さん
・この人はほんとに色んな役ができるし最近はずれがないです。
・やっぱり王次とのばかっぷるぶりがかわいかった!あれが微笑ましく見えるのはこの人の魅力かも。
・お光の賭場での登場はかっこいい!ああいうクールビューティーも様になってた。
・お光とお幸の2役の早替わりもすごかった~。そして唯一のバラードも♪

お里の夏木マリさん
・のっけから飛ばしまくり、てかあのメイクは反則だ(笑)
・鬼のような女性なんだけど、メイクとキャラの作りこみのせいでなんか憎めない雰囲気が出てた。夏木さんならではの声色の変幻自在っぷりも相変わらずさすがです。
・幕兵衛をたきつけてだんなを殺すシーンの錯乱っぷりがこの人で普通にマクベス夫人を観てみたくなった。

お文の高橋恵子さん
・キレイな方だからか、演技が抑え目だったせいか、お里とは違って「極道の妻たち」みたいな雰囲気の姐さんでした。
・夏木さんとのデュエットの場面ではやっぱりパンチが弱かったのが残念・・・。
・花見のシーンで重箱の中身、本気でぱくついてたのが面白かった(笑)

佐吉の高橋洋さん
・個人的に大注目の洋さん、豪華な出演者陣との絡みがほとんどなくて残念だったけど、インパクトは強烈だった!
・桶を作りながらの講談風な喋り方が、リズミカルで、とんかちやカンナを扱う音もリズムの一つになってて、桶やとんかちを回す手も自然で、すっごい魅入っちゃった。
・相変わらず声と表情にひきつけられる。
・恋焦がれた浮舟太夫が自害しているのを見つけた佐吉の狂乱が痛いくらいだった。なのになぜか穴に落ちる・・・悲劇なのに泣かせてくれない、むしろ笑わせる井上脚本と蜷川演出にしてやられた。
・もっと出番を!(爆)

幕兵衛の勝村さん
・テレビじゃとぼけた役が多いけど、舞台に立つと強烈なオーラが・・・おかげで目が離せない。
・蜷川さんのマクベスでマグダフ演ってたのに、今度はマクベスな役どころ。浪人姿がかっこいい!
・魔女(?)の予言のシーン、あの釣竿完全に客席に入ってたし、勝村さんも狙ってた?(笑)ヤクザ者たちの鼻と耳が付いた状態でも客席にあれを入れちゃうのがおかしくって。

百姓隊長の木場さん
・ストーリーテラーを兼ねてるので、ほとんどのシーンに登場。役者さんと絡まない演技って難しいだろうなあ。
・前述の竜也くんとの掛け合いは圧巻!!お互いの呼吸をちゃんと読んでやってるな、というのがびしっと形になってた。

鰤の十兵衛の吉田鋼太郎さん
・製作発表でも言ってたけど、二人の娘より年下なのに、あの重厚感たっぷりの老人役がほんとに上手かった!心の声と、表面の声の使い分けも素晴らしい。
・娘達に虐げられてる姿もかわいそうなんだけど、どこか笑いを起こすような演技ができるのは重要。(もちろん脚本と演出もそうなんだろうけど。)

紋太と九郎次(と偽紋太)の西岡徳馬さん
・安定感ありますね。上品ドライバー!(わかる方いますか?)
・一番好きだったのはやっぱり「偽紋太」のシーンだったり。だって「殺されたんだ・・・えぇ~?!そうだったの?」てあのすっとぼけた感じがなんとも笑えてしょうがない(笑)

老婆と佐吉の母の白石加代子さん
・老婆がおもしろくてかわいくていいんですか(爆)実年齢よりかなりちゃんと老婆に見えた・・・。
・お墓の前で佐吉の母が太夫に嘘をつく場面、「死にました!」をただ繰り返すんだけど、そこに「ちょっとだけ浮舟がかわいそうなような、でももう引っ込みつかないし、息子もかわいいし」みたいな逡巡を感じた。

浮舟太夫とお冬の毬谷友子さん
・狂気のお冬、体当たりの演技がすごかった。あれはホンモノ?
・どちらの役もか弱そうな印象だから演じ分けが難しそうだなあと。浮舟と佐吉の部分は、本筋とは直接は関係ないんだけど、かなり印象に残った。
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by yopiko0412 | 2005-10-12 16:59 | 演劇  

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