『吉原御免状』役者陣

前回の続きで、今度は役者陣について。



まずは主役・松永誠一郎の堤さん。原作でも、山から下りてきたばかりで剣の達人ではあるが世の中のことにはまったく無垢な青年という異彩を放つ主人公、堤さんもインタビュー等で「25歳の、女を知らない剣豪を、40過ぎの自分が演るなんて」とおっしゃってたけど、そんな心配はまったく無用でした。
冒頭から裏柳生の手の者たちをひらりとかわしながら斬る、だけどその意味とか、そういうことには無頓着。
幻斎にも飄々とかわされている様子は、まさに山から下りてきた青年。
そして吉原に入ってから徐々に色々なことを見聞きしていき、義仙との最後の対決では「ようやく人間らしくなったな」と言われる誠一郎、このあたりは原作にはない台詞だったけど、私にとっては原作の行間にあった「誠一郎の成長」を端的に言い表した言葉で、すごく響いた。そして、この舞台の中で堤誠一郎は確かに「無垢な剣豪」から「人間」へと成長し、「修羅」に生きる道を選ぶに至った変化を表していた。だから、勝山に止めを刺す時の「かつやまぁ~!」、そして怒りの力で義仙と対決するときの「柳生義仙!」という叫びがものすごく印象的だった。声の感じも、表情も、ほんとに冒頭と同一人物とは思えないくらいの変貌振りでしたもの。
堤さんは、おばばさまの助けで夢の中で甚内(幻斎)にもなった。この甚内のキャラは、誠一郎とはまったく別のもので、堤さんの二役が観れたのは本当に幸せだったなと。『幻に~』のときも、同じ人物で性質の違う役を観ていたけど、今回はまったく別人。始めこそ、甚内になった自分に違和感を感じている誠一郎の雰囲気だったが、甚内として吉原を創り上げる構想を語るシーン、お清を庇って勾坂と対決するシーン、家康(実は影武者)に直談判するシーン、甚内が同胞のために、人生を掛けて気付いた吉原の成り立ちを、誠一郎が追体験する様子はわくわくしたなあ。
そして、殺陣はさすが!誠一郎は本気を出すと二刀流になるんですが、ものすごいスピードの殺陣で、しかも両手ってどんだけすごいんだ!という。片方の刀身を肩に掛ける仕草をするんですが、それがすっごい様になってて美しい♪古田さんとの一騎打ちはこの二人の美しさがにじみ出てました!!
そうそう、美しさといえば、忘れちゃいけないのが褌姿の堤さん!するするっと着物を脱がされて、褌一丁で舞台にすらっと立つその姿も本当にステキでした。かっこいいんだけど、勝山にされるがまま感がまた誠一郎の無骨さが見えていいシーンでした。

そして敵方の古田さんは、もう完全なる悪者、義仙。原作でも、柳生総帥の兄の心情を理解せず、古びた因習と怨念に取り付かれた義仙だけど、舞台上の古田さんは背筋も凍るくらいの恐さで。飴売りに化けてたときはちょっと甲高い方の声だったんだけど、それ以外ではずーっとものすごい低音の、古田さんの「悪者声」全開!でもあの悪者声、ちょっとこもっちゃって聞こえずらいのが難点なんですけどねえ・・・悲しい。
カーテンコールでは、いつもの古田さん(笑)隣のじゅんさんのお尻にちょっかいだしまくってたけど、何がしたかったのかわかんない(爆)でもおもしろかったからいい~☆

そのじゅんさんは、今回はかんっぺきに笑い無し!一箇所だけ、古田さんと言い争う場面で、「飴売りに化けて」みたいな台詞に「やつらをなめてかかったんだ」という儀仙に「お前はだじゃれも面白くない」というシーンがあったんだけど、それもあまりにも緊迫した空気で、話してる内容はめちゃくちゃ真面目だったので一瞬わかんなかったし(汗)一瞬後に気付いて、観客も微妙に失笑するような場面でした。
それ以外は、ほんとに苦悩する柳生宗冬、渋かった~!配役見たときじゅんさんが宗冬?!とちょっとびっくりしたんだけど、ぴったりだったじゃないですか!誠一郎に裏柳生の剣を指南するシーンがなかったのが本当に残念だけど・・・でも、儀仙を諭し、柳生のことを考えているのにそれが伝わらないこと、そうなれば誠一郎に儀仙を斬ってもらうしかないこと、この物語に柳生側の事情という要素をきっちりと反映させる役でした。こんな渋いじゅんさんは珍しいんじゃ?去年『新選組!』で水戸藩士を演じたときも、愚直な武士の役なんだけど、月謝を払えない辺りは微妙に軽妙な感じだった覚えが・・・。

誠一郎に味方する旗本、水野には梶原善さん。善さんもアカドクロに続いての新感線出演、今回はがらっと違う役で、きっちりと殺陣もあった!(アカのあれは殺陣だけど、概ね刀研ぐのが仕事だったから(笑))この水野も、原作では始めの方に登場しただけだったけど、中島さんが膨らませて膨らませて、善さんのキャラも加わって、より魅力的な人物になってたなあ。誠一郎に興味を示し、詳しいことはわからないけれど、誠一郎と吉原に与する、その気持ちは裏柳生だとか吉原の秘密だとか誠一郎の出生だとかは関係なくて、ただ誠一郎が気に入った、旗本としてのんべんだらりとした生活に飽き飽きしてた、ていうだけの、ある意味すっきりした気持ち。それが結構爽快だった♪みんなが笑いに走らない中で、水野というキャラそのものをちょっとした清涼剤的なキャラにして遊びを加えてて、天然朴訥キャラの誠一郎とのやり取りが作った笑いではない笑いを醸し出してたのは堤さんと善さんの味なんだろうな☆
善さんも、堤さん同様、過去の物語で二役。こちらは甚内の盟友ということで、水野とはまた違うけど、頼もしい役柄。役者さんの二役を観ると、キャラの作り方の違いが一つの舞台で二度楽しめるので美味しいです。
カーテンコールではアカドクロでもやってた両手を広げて飛行機みたいな登場、ずーっと飛んだり跳ねたりはしゃいでて、かわいくって仕方ない(笑)聖子さんとも遊んでたしねえ♪

そしてもう一人、原作からしてものすごい大物な幻斎は、おひょいさん。幻斎は原作とはちょっと違ったキャラに変わってたけど、それでも雰囲気としてはおひょいさんのあの人を食ったような雰囲気はぴったりでした。が・・・本当に残念なのは、どうも台詞があぶなっかしくてしょうがないこと・・・何回か妙な間があったり、明らかに台詞間違ってたり、ある意味どきどきした(汗)せっかくのあの雰囲気が、台詞を間違えたり怪しかったりするたびに損なわれてしまうのはもったいない!!
それでも、あの語り口は貴重な味を出してたし、おばばさまの聖子さんに頭なでなでされちゃったりしてかわいらしかったりほのぼのだったりもなかなか美味しい役どころだったなあ。そう、あとは台詞!台詞だけ!!

女性陣は、なんといっても勝山太夫の松雪さん!舞台2度目とは思えないほどの堂々とした演技、声もきれいでよく通るし、姿も美しいし、勝山の哀しさがほんとに際立ってました。
原作では勝山は高尾とおしゃぶの影になってたような印象だったけど、この脚本では完全なるヒロインに描かれていて、キャラクターも松雪さんのイメージとぴったり♪冒頭の花魁道中で誠一郎と観客に強烈な印象を残し、その後吉原のはずれで誠一郎と正面から言葉を交わすシーンではもっと庶民的な魅力を見せ、義仙との密会の場面ではくの一としての切れ味と美しい濡れ場(正直、芸能ニュースでここばっかり取り上げられてるのは好きじゃないけど)を披露し、誠一郎に知らずに惹かれてしまってとまどう様子は花魁でもない、くの一でもない、普通の女性の印象。色んな表情で観客は勝山に感情移入させられた。
やっぱり義仙にやられる場面はほんとに辛かったけど・・・。最期の言葉が、原作と同じでよかった。あの台詞すっごく好きです。

そして誠一郎に関わるもう一人、高尾太夫の京野ことみちゃん。こちらは原作では結構重要人物だったんだけど、舞台では少し控えられちゃったかな。でも原作の通りだとことみちゃんでは物足りないなあと感じてたので、これくらいの役でよかったかも。ことみちゃん、かわいらしいんだけど、私にとってはもう少し、という印象。始めの第一声が、マイクの音量が大きいのか、ご本人の発声のせいかわからないけど、どうも花魁にしてはきんきんし過ぎてたので、一気にがっくりしちゃったんですよね・・・。花魁言葉もちょっとまだ身に染みてる感じがしなかったのも残念。

高田聖子さんは、今回は出番は少ないけどインパクトのあるおばばさま!年齢不詳の八百比丘尼ですがすっごくチャーミングなおばばさまで、そして背中の刺青も鮮やかだった~身体の線はやっぱり華奢ですね~。熊野から出てきたということですっかり本物の関西弁、相変わらずよく通る声で、真面目なこのお芝居の中でちょっとだけ、くすっという笑いを提供してくれて、短いながらも印象に残る役。もっと出番が欲しかったなあ・・・もったいない。

番外編でお気に入りは、耳助(爆)いやぁ、あのキャラ好きです☆
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by yopiko0412 | 2005-09-26 23:14 | 演劇  

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