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『LAST SHOW』

2005/7/20-19:00開演 PARCO劇場

長塚圭史さんの作品、初体験でした。一言で言うなら、衝撃的。
何をどう書いたらいいかわからないけど、おもしろ恐くて哀しい。KERAさんの『砂の上の植物群』と似た感じを受けました。

一応、長塚さんの作品は「ぐろい」とか「えぐい」という噂は知ってたので、覚悟はしてたし、風間杜夫さん演じるお父さんが永作博美さん演じる美弥子を殴るだろうな・・・とは予測してたんですが、その後の展開はやはりつらかったです。風間さんが・・・こ・こ・こ・恐すぎですから・・・(涙)それに、テリーヌが・・・(怖)



テリーヌの流れから古田新太さん演じる渡部さんの裏の顔の話、怖いしありえないしものすごく究極的なんだけど、そこに中島さんが感動しちゃう辺り、変な説得力があった。全てのことを無視して、ただ彼の「想い」の部分だけ取り出すと、究極の愛情表現だったと・・・。そこが最後にそれまで一人現実世界の私たち観客と同じ視点にいたはずの、北村さん演じる琢哉があっち側に行ってしまうことへの伏線としては、すんごい説得力だったと思います。

美弥子は美弥子で、何を言っても通じないお父さんと、お父さんにけしかけられた渡部、こちらも元々ちょっとずれた神経の持ち主なので簡単に懐柔されたわけで、この二人から受けた仕打ちの中で一番切れたのは「マヨネーズかけられたこと」てそこかい!みたいな(笑)でも最大のピンチの場面で登場した「我が子」を誰よりも早く受け入れ、彼(性別不明だが、面倒なので彼で。)の言葉に耳を傾け、それでも彼が言う「おじいちゃんこそ生まれてこなければよかった」という言葉には「そうかな」と疑問を挟む。これ、私の中では、「おじいちゃんは生まれてきて誰かの役に立ったか?立ってない」(のような感じ)という彼の言葉に対して、「でもおじいちゃんがいなかったら琢哉は生まれてこなかった」て思ったんじゃないかな、と感じたんですが、説明が無かった・・・。でも、この部分以外の彼の言葉は一番真実で、当たり前で、現実的な意見だった。「生まれてくるのに、両親選べないでしょ」「作っちゃったら、作られちゃったら、文句言いっこなし」はい、その通りです。

この後の、彼が消えてしまうとわかった後の美弥子の反応には泣けます。泣けるんだけど、笑える場面・・・もう、これどうしたらいいんだろう?ここだけでなく、ほぼ全編、笑ったら怖くて、怖がってたら哀しくて、哀しんでたら笑えて・・・感情引っ掻き回されて、自分がどの感情にいるのかわからなくなります。

市川しんぺーさんの登場で「これは仮想現実だ」と思うことができたけど、気付けば中山さん演じる中島さんが始めに生き返った時点で仮想現実だったんだ・・・あまりにもすんなりしてたのと、あの世界にやられてたので後から気付いた・・・。中島さんは、あれはやっぱり始めの時点で死んでて、ただ、彼の「撮りたい」執念が「ここぞ」という場面でだけ彼を蘇らせてたのかなと。だから、一貫して彼が撮りたかったのは産業廃棄物処理場じゃなかったんだよね、最後爆発音はそれでしょ?

いっぱい細かい小ネタがあって突っ込みたいんだけど、あまりにもそれ以外の部分が強烈過ぎてやめておきます。
あ、でも一つだけ。中島さんが刺されちゃった時、刺されたことに気付いて「あれ?」て言ってたら、奪い合ってて床に落ちてた携帯を中島さんが踏んで「ばきっ」と盛大に壊れてましたが・・・完全なるハプニング(笑)

役者さんについては、もうあれだけの世界観をちゃんと表現できてる時点で言わずもがな。(多少台詞のトチリが多かった気もするけど目をつぶろう)観ているこっちがどきどきしたり痛かったり苦しかったり。私にとって初見は永作さんと中山さんと市川さん。すばらしかったー!役ともはまってましたしね。風間さんはとにかくあれだけの恐さ・・・不気味すぎてほんとつらかった。脇役なのに色々やってくれる古田さんは相変わらず。北村さんはふつーの人99%が完璧だったので、最後の静かな振り切れ方が目立ちました。

しかしすごい世界観だけど、あれはやっぱりあのぐろさ、えぐさがないとダメなのかしら?私には辛いんですけどね・・・それでもものすごい衝撃だったことは確か。阿佐スパの本公演なんかもっとすごいんだろうか・・・うーん、観たいような、観たくないような・・・(悩)同じぐろさ、えぐさでも先月の歌舞伎座&コクーン歌舞伎の方が観やすいのはなぜか・・・完全なる仮想現実だからですかね。同じように人間の業の深さを描いてるんだけど、描写の仕方が違う。今回のは「とても身近な普通な現実世界」に仮想現実を重ねられてるから、俯瞰では見れないんだ(涙)

by yopiko0412 | 2005-07-22 23:43 | 演劇  

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