劇団☆新感線『シレンとラギ』

2012/5/26-12:30開演 青山劇場
大阪公演の情報をシャットアウトしてやっとの観劇、新感線の新作!藤原竜也くんと永作博美ちゃんのW主演で劇団員も総出演のワクワク公演!
ざっくりざっくりあらすじから。




舞台は、北の王国と南の国とが争う地域。
北の王国は、先王亡き後若い息子が後継ぎとなるが、実質は執権が握っている。北の王国の侍所の大将キョウゴクはかつて南の国の指導者ゴダイを暗殺することで南の力を削いだが、20年経ってゴダイが復活したという報告を受ける。そこで、20年前にゴダイを暗殺した美しき暗殺者シレンを再びゴダイの暗殺に送り出す。キョウゴクの息子のラギもまた同行する。
南の国では、確かにゴダイは目覚めていたが、毒の影響からかかつての彼ではなかった。南の国に入ったシレンとラギはゴダイの懐に入り込み機会を狙うが、シレンの過去、南の国の内情、北の王国の内情、ラギの若く熱い想い、が交錯し、裏切りと策略、哀しい運命が巡る・・・。

あらすじといっても細かく書けない!
新感線にしては、というとあれだけど、珍しくディープでエグイところをいったな、という印象。もちろんいつものように笑いもあり、小ネタもあり、なんだけど、全体の重さはずっしり。

シレンは、狼蘭族、サジと一緒です、刀衣と一緒です。毒使い、刀も使うけど小刀だった。何度も出てくる狼蘭族の台詞にドキドキ。サジを、刀衣を思い出して狼蘭の哀しさが増す仕掛け、もちろん蛮幽鬼を知らなくてもいいんだけど、知ってることでより物語とシレンの背景に深みが出るということか。
で、このシレンの抱える運命の重さたるや・・・しかもラギは若さというエネルギーが先走った感じがあるしある意味壊れやすいし、壊れることができたけど、シレンの方がよりその罪深さを感じるだろうな・・・簡単に死ぬことも、壊れることも許されないだろうし、彼女の精神の強さがそれを阻む。
彼女が再び南の国へ行くのをちょっと拒んだのも、ゴダイがナナイを探していると聞いて動揺したのも、シンデンに昔の話をされて苦しそうにしたのも、彼女の心の奥底の哀しみがあるから。もしかしたらゴダイを少しでも愛したのかもしれない、けれど彼女にとっては相手を愛し、懐に入り込むことで仕事(暗殺)を
するための一つの手段にすぎなかった。そのはずだった。
でも、そこに子供、というメタファーが加わり、殺すために愛した男の子供を産み落とした。それがシレンの中に小さな傷を残していたのはいうまでもない。狼蘭族としてあることを自分に律して、愛は殺し合いと強く主張する彼女だけど、どこかに愛を探してたんじゃないだろうか。

そんなシレンの血の味の毒消しのくちづけは、若いラギにとっては年上の憧れの、少し寂しさを漂わせた美しき暗殺者への愛情という新しい甘美な毒薬でしかなかったのだと思う。
ラギの若くて情熱的な愛情表現はシレンには経験のない眩しさだったんだろうな、そしてその瞳の中に希望を観たのかもしれない、から落ちたのか。堕ちた、ともいう。そしてそこから這い上がるためのキーが、彼女の狼蘭族の「血」の力、それはシレンからラギに受け継がれた力、堕ちた二人に生きる意味を与えたのは、その「血」だった。
ラギからシレンへの「それは母として?女として?」の問いかけ。2度目の問いかけに、まっすぐラギを見つめて「人として」と答えたシレンは、それまで狼蘭族として暗殺マシーンでしかなかった彼女が、そのために本当の意味で女にも母にもなれなかった彼女が、初めて「人」になった瞬間だった。
舞い散る白い毒の間を、血のしぶきを上げながら二人が進むエンディングは、逆説的だったなあ。浄化の色の白が毒で、不浄の血の赤色が実は毒消し。二人は人々の毒を浄化することで自分たちの罪の贖罪を続けていくんだ、という美しいけれど悲愴で哀しい、けれど考えようによっては、殺すことと死ぬことしか考えていなかった二人が初めて人を生かすことと自分たちが生きることを考える前向きなエンディングだったのかもしれない。

生きる、というキーワードでいけば、モンレイとマシキ母子はまさに「生きる」を体現してた。シレンは二人を殺すつもりはなく、むしろ生きるパワーを与えたのだから。
そしてシレンに「生かされた」のはギセンもか。純粋でバカで虫が好きな、王位や地位や名誉に興味のないギセン、刀を捨て、虫と共に生きることができたのだろうか。

時系列の使い方がちょっと違ってて珍しい。
克実さん絡みのシーンがうまいこと時系列をずらしてて、面白い。過去のゴダイ様の説法シーンはものすごく理不尽なんだけど、えも知れぬ強烈なカリスマ性と説得力があった。まあ、教団の教祖様が説法しておかゆ振る舞ってるんでどうしても蛮幽鬼を思い出したんだけれども・・・いつおかゆソングを歌うかと(笑)
ああ、そういえばSHIROHでもそんなシーンあったな、てどっちも上川さんだし(爆)
そして現在のゴダイ様のあり様がまた・・・子供のように純粋で、いなくなったナナイの愛情を求めてるゴダイ。ある意味2役ともいえる克実さんの振り幅激しかった!
そしてそんな子供のようなゴダイと対比してやはり正気に戻ったゴダイ様がいい。シレンの放ったしびれ薬の中で正気を取り戻した声を出したけど、一瞬でまたボンクラを装い、でも盆が回ってく間にキョウゴクを後ろから睨みつけるゴダイ様、ああいうのゾクゾクする!キョウゴクのことも凌ぐゴダイ様。この戯曲の中で最強だったのはきっとゴダイだろう。

で1幕ラストのあの壮絶な美しいシーン、から2幕にはその回想シーン。
1幕ラストは桜吹雪が舞い散る中での色んな陣営がまじりあって、色んな真実が明るみに出て、いきなりの沸点に到達する場面が、セットも美しく、演者の配置もきまって、そして何よりあのシーンでググっとテンションを上げた藤原竜也の滾りは真骨頂!と思った。前半は若くてまだふわっとしたところのあるラギだったけど、あそこでカチリと何かがはまったからこそ、竜也くんがあの温度になったんだろうなあ。
で、2幕はその続きではなく始まる。

シレンの夢のシーンは彼女の心の闇が迫り来るようで、彼女からラギが生まれてきたり、それがゴダイ様に変化したり、何かに取り巻かれたり、ああいう演出表現も珍しい。でもセットと、何より照明の美しさがよかった。あそこは引きの画で観たかったなあ。
1幕ラストの続きは回想で、ラギがゴダイを殺してロクダイになった流れ。ゴダイはシンデンにラギを生かすように言ってたんだ。そしてゴダイはラギの運命に、自分が生きるよりも彼にさらに過酷な運命を与えることで彼が生き、そして教祖として人々をまとめることを望んだ。
キョウゴクやダイナン、モロナオたちがかつて共に同じ方向を見ていた時期があったこと、そしてダイナンもキョウゴクも、ゴダイという人物を評価していたこと、だけど見ている方向が変わってしまったこと、などが語られていたけど、そういう意味では、ゴダイにはゴダイの中の正義があって、彼なりのやり方で人々をまとめ、救い、国を守ろうとしていたのではないだろうか。それが過激な考え方であっただけで、でも彼を信じていた民もいたわけで。ゴダイは、人を救うには、人の罪を背負うには、もっとも重い大罪を抱え、もっとも苦しい運命を受けたものでなければならない、という考え方。だから、ラギに母との交わり、という罪にさらに父殺しの罪を、運命を、与えたのだろう。自分より重い罪を持たせることで、人々を救えるように。

キョウゴクの側面の話になると、また色々要素が違った。キョウゴクのミサギへの偏愛がシレンとラギにかかってたのか。キョウゴクは途中まではいい父親なのかと思ってたら、あれは自分を捨てて他の男に走った妻への愛をミサギに求めた、ということでいいのか。だけど父娘の交わりはできなかった、だけどシレンとラギが母子で交わったことに、羨望を感じた、てことでいいの?
でもミサギも始めからやたらラギにラブな雰囲気だったし、でも父上にもちゃんと娘として愛情があったようだったけど・・・なんでいきなりロクダイになったラギに走った?それも女として。彼女は、結果的には兄ではなかったけど、最初は兄だと思ってたラギに女として愛情をもってたんだよねえ。その時点でプラトニックながら、やっぱり人の道をはずしてると思う。
で、ミサギはラギによって生かされたけど、シレンとラギの進む道に彼女は一緒には行けなかったのだから、彼女はどこへ向かったのだろう・・・。ちょっとミサギの描写が不足してたかなあ、と思う。

キョウゴク側でもう一人、ダイナンとの関わり、またそっちかよ、て思ったけど乙女なじゅんさん(笑)ピンクのマントだものね、わかりやすいよね(爆)必死にキョウゴクに愛を迫るダイナンとキョウゴクの二人のシーンは笑いっぱなし!じゅんさん楽しそうだったなあ♪日ネタっぽいのはやはりこの二人。またモノマネやってたじゅんさん、今回は田中邦衛さんだった(^o^)古田さんよく無表情でいられるなあ!!

タイトルバックのシーン、南の国へ暗殺の旅に出るシレンとラギの二人にタイトルが出る。
そしてラストシーン、南の国の人々を救うために進むシレンとラギの背中。うまい対比だなあ。

あと、毎度のことながらお約束も満載で「はーはっはっは!」とかあるとなんか嬉しいもんね(*^_^*)おお、ここでそうきたか?!ていう。そして逆木さんと村木さんがグルグル入れ替わっても似てる件(笑)二人の鎧の直垂に豚の印(笑)さらにさらに、村木さん、また牛車の牛!草をはむはむ(爆)あれも今後お約束になるんだろうか~?

ヒトイヌオの河野さんオイシイな!ちょうど席が下手側のサイド目だったのでヒトイヌオの無意味にカッコつけるシーンが目の前(笑)四つん這いで何度もシレンに犬笛で呼びだされるシーンとかあれ台本通りだとしてもほんとにきついんだろうな~(^o^)その内永作ちゃんもあのシーンもう少し遊んでくれたりしたらいいな。遊び所少ない役だけどさ・・・。ただ彼(?)は結局誰の命令で動いてたのか・・・キョウゴクが寝返ったあとは誰に報告してたのか、なぜシレンたちに協力してくれたのか、立ち位置が謎だった・・・。

演出的には映像が少なめだった気がする。幕を使った演出多かったなあ。男女の交わりシーンは全て幕や布を使っての演出ね、あ、ロクダイとミサギの未遂シーンは何もなかったかな。
メインのセットはシンプル、四角い枠が盆の真ん中にあって枠の中を開いたり閉じたりすることで、盆の中を場面を二つにしたり奥行き持たせたり、面白い。
ゴダイとキョウゴクが同じように枠の向こうへ落ちて死んだのは、ラギにとって憎むべき二人の父親という共通点かな。

登場人物多すぎてみんなのこと書ききれてない脚本だった気もするけど、ギセンの三宅さんはもうっ!あのバカかわいいのは反則技!しかも強いってどんだけ三宅さんに当て書きなんだろう(笑)鋼鉄番長の救世主だものね、見せ場満載で良かった(^o^)
シンデンのキャラと設定もなんか登場人物多すぎたためかあまり詳しい描写がないから薄かったなあ‥もったいない。彼も最後は生きたんだよね。

殺陣は今回結構人数の多い殺陣が多かった。でも熱かったのはやっぱラギとキョウゴク、藤原VS古田の殺陣かな。やっぱ上手い人同士の殺陣はかっこいい!シレンの小刀の殺陣も頑張ってたが、どうしても小柄な永作ちゃんに小刀だと分が悪い。竜也君は後半の殺陣が良かった。でもキョウゴクを倒すところは一瞬何が起こったのかわからなかった。それまでキョウゴクの方が上だったのにあれどうしてそうなったんだっけ?次回その辺をちゃんと観てきたい。

まだ色々言い表せない部分もあるけど、色々深読みしながら思い出す。次回またこの深読みを元に観ると印象が違うかもしれないし、舞台も進化してくるはずで、楽しみだ!
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by yopiko0412 | 2012-05-27 14:45 | 演劇  

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