『黴菌』

2010/12/25-18:00開演 シアターコクーン

豪華な出演陣は気になりつつも、なんとなくチケットを取りそびれてしまった舞台。友人がチケットを取った、ということでお誘いを受けて観劇。しかしこれ観てよかった!!
私の中で、以前観たKERA・MAPの舞台が、閉鎖された空間で、もう坂道を転がるようなどろどろっぷり、不幸の連鎖、その中で生きる人間の生命力、でも破滅的な群像劇、というものだったためか、そういうものを想像していたけれど、確かにやはり閉鎖された空間でのどろどろした人間関係を描いているんだけれど、一度落ちるところまで落ちた人々が、やがてまた浮上することができる、そこにあったのは様々な形の「愛」であり「家族」である、それが彼らの「救い」である、というなんとも素晴らしい構成のお芝居。




終戦間際のとある洋館。
そこに暮らすのは老いた父とその3人の息子たちと家族。そこに使用人や老いた父の愛人とその兄、この家の客人夫妻が絡む。
軸となっていたのは、その昔亡くなった兄弟の一人、三男のヒトシの経緯。そこに、長兄の精神科医が行う人体実験、ヒトシの死に責任を感じている次兄の葛藤、そんな家族の雰囲気にいらつき、放蕩息子となっている四男のキョウ。それぞれが抱える闇は、しかしヒトシの死の真相を知った時にお互いを思いやる優しさと愛情の絆に変わった。
ラスト、いい年のおじさん3人の泣きの演技に、それまでじわじわじわじわと刺激されていた涙腺が見事に決壊しました・・・。
それぞれのキャラクターがとても個性的で、しかもきちんと意味も役割もあり、相互に作用していたのがお見事。

女性陣は、みな「強い」女性だった。
長兄の妻、高橋恵子さんの佇まい。鷹揚でのんびりしているのかと思ったら、夫のやっていること全てをきちんと知っていて、それでも黙っていて、支えてた。それがこれ以上行き過ぎてはいけない、というところで、爆発した。夫の人体実験のために、一番大事な人への愛情を徐々に失わされ、妻をなじるようになってしまった男性と、それでも夫を愛し続ける妻園子のために夫を説得する場面が素晴らしかった。
そして、キョウの口付けでちょっと女を思い出してみたり、でも最後には逆にキョウとキスしてお金をさりげなくあげたり、そのときにはもう旦那さんとの仲も修復、というか、恐らく彼女の方が主導権を握ってたり。
最後には記念写真を撮る、といって女性陣をリードしてはしゃいでる姿に笑顔がこぼれる。

人体実験の材料にされた夫から、愛情を疑われ、存在を疎まれてしまう妻、園子。本当に「尽くす」妻であり、夫が大事だという想いに揺るぎがない。この夫婦の徐々に壊れていく様には肌の表面を削られるような痛みがあった。最後、なぜか夫は少し回復し、妻をなじることはなくなったが、まったくの元通りではなく、どちらかというと人格を少し失った感じではあったが、それでも夫を支え、二人で生きていこうとする姿は力強い。彼女なら大丈夫、と思わせてくれた。
この二人の物語では、それこそいつか夫が園子を殺してしまうのではないか、という恐怖感を持ちながら観ていたが、そういう意味でもKERAさんにしては珍しい優しいお芝居だったと思う。

老いた父の愛人のオト。どこか浮世離れした鼻持ちならない人なのか、と思っていたらそうでもない、実はかなり地に足の着いた、現実を良く知る人だった。そして実直な兄思いな妹。彼女は、この五社池家の中にいながら、どこか客観的に彼らを見ていた。だから「この家の人間は素直じゃない」と言えるのは、彼女には色々なものが見えていたから。終盤、銀一郎の心を動かしたのも、もちろん父子の愛情なんだけど、その愛情を分からせたのは、彼女。
最後には兄と共に仲良くお出かけ。きっとこの後も彼女は素直に生きていくんだろうな。

オトの兄の思い人で、でもキョウと出会ってキョウと結婚したユキエ。この人も、キョウの放蕩っぷりをわかって、疑いながら、ある程度は受け入れていた。でも彼女もキョウの本当の姿は見えてなかった。キョウも見せようとしていなかった。すれ違っているような夫婦だったけど、でもキョウの本当の姿を知ることで、この夫婦は本当の夫婦になれたのかもしれない。

そしてー!とてもいい味わいの山本さん!のんびりした、でも忠実はお手伝いさんなんだけど、純真な心をもっていて、オトの兄が大好き♪五社池家の面々のこともよく見ていて、でもでしゃばり過ぎない。でもちゃんと向き合うことも出来る。不思議なほんわかした雰囲気がほんとにかわいらしくて、オトの兄のことで乙女になっちゃう様子とか、ほんとにいじらしい!最後、二人くっついたのかと思ったら違ってたのが残念。実直な男と純真な女、これ以上ないカップルだけど、くっついたらいいのになあ、と思いました。しかもなぜかいいところのお嬢さんで堅実に貯金もあった様子。これ絶対いいお嫁さんになります(笑)重い内容なんだけど、オトの兄と共に不思議な佇まいで雰囲気をやわらかくしてくれてました~ステキ♪

(続きはいつか・・・)
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by yopiko0412 | 2010-12-28 22:26 | 演劇  

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