龍馬伝第五話「黒船と剣」

前回ラストでやっと姿を見せた黒船、この黒船来航によって引き起こされた様々な波紋が、今回のテーマ。




黒船の来航に、幕府はついに、諸大名にその事実を知らせ、「どうしたらいいか」を尋ねるというありえない行動に出る。300年も続いた、「お上の仰せの通りに」の時代が終わった瞬間。幕府がそこまでの変容をせざるを得ないほどに、この出来事が「処理しきれない」ものだったことがわかる。
そしてその波は大きく、江戸の町では武具防具を求める武士で溢れ、龍馬や溝渕も例外ではなく。それにしても外国の船を戦う、なんていう想定外の事態に、振り絞って出た対策が、「大砲に見えるような釣鐘を沿岸に並べる」ていうのも、幕府が、鎖国がもたらした平和ボケだったり、井の中の蛙状態だったりをあらわしてる。
沿岸の警備に着いた龍馬だけれど、もちろん戦になるわけでもなく。戦うなら相手を見なければ、とこっそり抜け出す龍馬。山の中を海岸へ向けて通り過ぎるとき、他の警備隊に見つかって一瞬刀に手をかける・・・けど後ろの林に逃げ込む!旗指物と鎧兜に身を包んだ相手は樹に引っかかって龍馬を追えない、なんていう描写も、もう旧来の武士じゃダメ、てことを暗示しているのかもしれない。

岩陰に隠れる龍馬は、同じく黒船を見に来た桂小五郎と出くわし、一緒に黒船に遭遇。あまりの大きさに、刀を構えてみたけれど何も出来ない龍馬と小五郎。黒船が通り過ぎたあとの二人の放心状態でのやり取り、既に小五郎は師匠たちから外国の力について聞いてはいたけれど、初めてそれを目の当たりにした。龍馬は何も聞いたこともなかったものを、いきなり目の当たりにした。この時冷静に龍馬に語っているかのように思えた小五郎だけど、その後の描写から、彼もまた酷いショックを受けていたことが分かる。
この二人の、黒船ショックは実に対照的に描かれている。
龍馬は、黒船の姿を思い出しては絵に描き、剣術をしていても実が入らない。何かがおかしいと思っているけれど、黒船の話をしても、実際に見たものはいなく、誰も何も教えてくれない。そこで彼は一緒に黒船を見た小五郎を尋ね、疑問をぶつけるが、小五郎は小五郎で、識者たちの攘夷論と開国論を知っていて、でも自分の中でどう消化していいか、わからなくなり、「そのためには学問だ」と一心不乱に書にふけっていた。龍馬の「剣では太刀打ちできない」という問いに、武士としての己の証である剣、それを捨てるかどうかを人に問うな、と一蹴する。だけど、彼にも答えはわかってないし、彼にも疑問があるからこそ、「学問」で何かをつかもうとしているのではないか。
龍馬伝に関するインタビューなどで、福山氏が再三言っていた「わからないことをわからないと人に尋ね、人の話をよく聴き、一度吸収して自分のものにして答えを探していく龍馬像」がここにも現われているのかと思いました。

毎回、色々な人々や出来事の「対比」が描かれているのだけれど、今回もそれが黒船ショックを引き金に、あちこちに。
龍馬と小五郎の対比意外に、江戸と土佐の対比も。土佐でも、江戸で流行っていた「ペリーの似顔絵」が流行。見たこともない鬼のような顔に、武市道場では「攘夷」の気質が立ち上る。でも、ここで重要なのは、彼らはペリーはもちろん、黒船だって見てはいないということ。そこが、江戸と土佐、ひいては龍馬と武市との対比。実際に目の当たりにしたからこそ、龍馬は軽々しく「攘夷」と言えない。
土佐パートは、短いながらも色々重要。この黒船事件を機に、土佐の心あるものたちも意見書を書く。そして土佐ではその意見書を元に抜擢人事が行われ、吉田東洋が参政につく。一方武市の上申書も、「よくできている」と評価される、だけど下士である武市には直接言葉はかけられない、それでも、武市にとっては身体が震える程の喜びで、家に帰れば祖母と妻に「殿様は素晴らしい方だ!」と嬉しそうに報告する。このあたり、「世界」を見ているようで、実はまだ世界なんか見えていない、まだ「お殿様に認められる」ことが最高の栄誉と思っている訳で、大きなことを言っているようで、でも結局は狭い了見の中でのこと。それに気付いてないのが、端から見ると今後の武市を知ってるだけに、哀しい。
同じく意見書を出した人間がもう一人。弥太郎。だけどこちらは読まれたかどうかもわからないくらいの状態で、武市の上申書が認められたという話に打ち震える弥太郎。弥太郎の上申書がどんな内容だったのか・・・気になる。

対比は他にもある。
加尾と佐那の変化がそれ。加尾は、龍馬との別れを機に、縁談を断り、お花お茶お琴のお稽古を辞めて、弥太郎に学問を教わる。
対して佐那は、龍馬と出会ったことで、剣術だけの日々から変わり、お茶や針仕事を始める。そして普通の武家の娘姿で登場。
この二人の変化にくっついて、二人の兄にも対比が。加尾が学問をすることに意義を唱える収二郎に、佐那が恋をしたことを喜び、坂本なら申し分ない、応援する、という重太郎。
千葉兄弟のシーンは面白かったなー。真面目な顔で、きんつばをネタに問い詰め、一人暴走して「二人が夫婦になって道場を一緒に経営していけば!」なんて夢物語を語る重太郎さん(笑)でも、佐那は、「好きかどうかなんてわからない、ただ、今までのようには坂本さんに接することができない」ていう。この辺、今までそんなこと考えたこともない女の子の正直な気持ちなんだろうなあ、と思ってほほえましい。

そして迷った龍馬はついに道場で定吉先生から問い詰められる。
心がここにはないと。
そしてついその迷いを伝えてしまう。「剣では黒船には勝てない。自分は何のために剣術を修行しているのかわからない」と。
厳しい表情、言葉で叱責する定吉先生に重太郎さん、必死にかばう佐那。
だけど、龍馬が出て行ったあとの二人の表情が、すごい。悔しそうな、でも、龍馬を信じたいような。剣は、技術だけじゃない、「極める」ことから得られる何か、がある。龍馬がそのことに気付けば、戻るはず。定吉先生の表情も、重太郎さんの悔しそうな、目に滲むものまで感じられる表情に、彼らが秘めている想いの強さをうかがえて、早く龍馬が気付いて欲しいな、と思う。
茫然自失で町を歩き、とんでもないことをしてしまった、と嘆く龍馬だけど、その迷いはまだ終わってない。来襲、吉田松陰との出逢いが、迷いの解決の糸口になるのだろうか。
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by yopiko0412 | 2010-02-07 19:51 | 龍馬伝  

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