十二人の怒れる男

2009/12/3-19:00 シアターコクーン

なんと11月は1回も観劇もライブもなかったという・・・近年の自分では考えられない事態になっていました。
そして12月は初旬に濃密な男芝居が2本!
その1本目で観てきました。

元の映画をずいぶん前に見たことがあります。でも、三谷さんの12人の優しい日本人は観てません。(チケット取れなかったので・・・。)映画の記憶は割りとあったと思いますし、大まかなことは覚えてましたが、それでも緊迫した密室でのやり取りに最後まで飽きることはありませんでした~。



12人の陪審員それぞれにキャラクターがあり、背景があり、それが劇中の彼らの言動で少しずつ解明されていくのですが、特に中心となる中井さんと西岡さんの対比がくっきりと出ていました。冷静で、抑えた演技で、論理的な中井さん。反して感情露で激昂しやすく最後まで抵抗する西岡さん。反比例する力が舞台にぴんと糸を張っていて、最後の西岡さんの追い詰められてからの流れは素晴らしかった。そして観客にまでぶつけてきたその大いなるパワーが、必至で張り詰めていた気持ちが、中井さんの一言で切られた瞬間の、静寂の重さと、救いの空気。
他の陪審員を通して、この物語が語られている社会の抱える問題も浮き彫りにされているのが特徴かと。移民への偏見、ブルーカラーとホワイトカラーの対立、スラム育ちへの偏見、年上の人間に対する敬意の重要性、普通の市民それぞれが持つ個人的な感情や背景や意見。でも、それらはこの陪審員という仕事の中では実は関係ないはずのもので、劇中でも言われているように「この判決によって陪審員は得になることも損になることもない」はず。でも、それでも人間が判断するにあたってはどうしても個人の様々な感情や背景や意見(時には偏見)が入ってこざるを得ない。
客観的に、「論理的に疑わしいかどうか」の判断をすることの難しさ。「人を裁く」という事実に向き合い、話し合うことの重み。裁判員制度というものが現実に導入された私たちの社会でも直面する命題、なのだと思います。

田中要次さんは、舞台では初見でした。テレビでは強面のためか、その筋の人とか刑事や、逆に顔は怖いけどいい人、という役柄が多く見受けられますが、この舞台ではほわーっとした空気の読めない人(笑)ちょっとインテリを気取ってみてるけど、かみ合わない。そして自分の意見がさほどない。流されやすい。でも暴力は嫌い。揉め事も避けたい。こんな人もいるだろうな、という人。全体的に緊迫していて怒鳴りあってる舞台の中で、ちょっとした笑いを誘うシーンを受け持っていました。
筒井くんは、ある意味予想通りな普通の青年役。この方、昔からこのイメージで、キャリア長いのに、それでも「普通の」イメージをやり続けてるのも珍しいかもしれません。でもあまりにも普通っぽいので、「スラム育ち」で「飛び出しナイフの扱いに長けている」印象はちょっと感じられなかったかなあ。
中井さんに負けず劣らず冷静で理論派な4号。佇まいが英国紳士風で、論理的な語りも明瞭でよかったです。斉藤さんの滑舌が独特なのはもうデフォルトですし、品川さんの枯れても痩せても、な雰囲気も得意なところかと。
役者さんは膨大な台詞量ですが、論理的な人と平和的な人以外は結構怒鳴ってることが多くて、偏見の強い10号の方なんかは、ずっと聞いていると一辺倒な怒鳴りになってしまって、もうちょっと抑揚とかリズムを付けて欲しかったかも。あと、論理的な語りをする人は、その論理的な語り途中につまずくと、ちょっと「あれ?」と思ってしまうのが残念。酷な要求だとは思いますが・・・。

今回、舞台をセンターステージにして、周りを客席が囲み、その客席の中にハンガーラックがあったりウォータークーラーがあったり、はたまた通路もあったりで観客に近い芝居設定。でも一応普段の正面が正面となる芝居をしてたので、ラストの西岡さんの表情は横と後ろの人には見えないんですよね・・・背中と台詞で伝える芝居、というのもかなりのハードルだと思います。
で、陪審員室の後ろには洗面台があってたまにそこで手を洗ったりしてる人がいたんですが、舞台の幕開けとラスト、その水道から青い水がさらさらと流れて始まり、そして終わったんですが、何か意味があったのかなー?とちょっと気になりました。

でもこれ、蜷川さん演出なんですよね、蜷川さんにしてはおとなしい、というのも失礼ですが、とってもスタンダードでした。物も落ちてこないし、劇的な照明もないし、破壊的な音もない。極めてシンプルな演出にちょっとびっくりしました。
蜷川さん演出ものは次はヘンリー6世が取れてます。あちらはきっと蜷川さん得意な手法が色々なんだろうな、と思ってます。

とかって書いてたら、ヘンリー6世のタイトルロール、上川さんがご結婚と!びっくりしましたが、上川さんの誠実な人柄の表れたコメントにほっこり。おめでとうございます!!蛮幽鬼の土門も幸せになるのだー(笑)
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by yopiko0412 | 2009-12-07 23:48 | 演劇  

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