劇団☆新感線『蜉蝣峠』

2009/3/24-18:00開演赤坂ACTシアター
古田新太舞台生活20周年記念公演第二弾、観て来ました~。
こちらもチケット入手困難っぷりがすごかったですが、割と当たりのいい新感線ファンクラブ枠で、平日だけどいいお席♪18時開演はやはりきつかったですが・・・MTGを入れられて冷や冷やしつつ、ダッシュで間に合いました。



クドカン脚本で、壊(Punk)ないのうえ歌舞伎、どうなることやらー?!と思ってましたが、大満足!もっと観たい!(観るけど・・・。)

旅役者崩れの銀之助が蜉蝣峠で出会ったのは、馬鹿の振りをしている記憶をなくした男、闇太郎。闇太郎は言う、蜉蝣峠で、人は蜉蝣の向こうに思い出を見る。しかし、記憶の無い自分には思い出がないから、何も見えない・・・。
銀之助は、蜉蝣峠で自分の過去を語る、一座の看板女優(?)兼座頭の妻と密通したため、男の証を奪われた。それを治す旅の途中だが、ろまん街という色町へ行こうとしている、男の証が無いのに・・・。
しかし二人が到着したろまん街は、街を仕切る勢力が2分して荒れていた。一方は、先代の親分の息子、天晴。一方は先代の親分の娘お寸の婿、立派。
二人を助けた盲目の飯屋の主人、がめ吉は、闇太郎を知っていた。昔、お上へ直訴状を届ける途中でこの街に立ち寄った子供、闇太郎。ちょうどその時、突然現れた大通り魔に先代の親分、その他この街の者達が惨殺されたが、その時奇跡的に生き残ったのが闇太郎であり、がめ吉は目をつぶされながら彼を逃がしてやったという。しかし、何も覚えていない闇太郎。
街には、もう一人闇太郎を知っている人間がいた。闇太郎の幼馴染で、結婚を誓ったお泪。蜉蝣峠で待っていて、とかつて闇太郎に伝えたのはお泪だった。そんな彼女も、今は天晴に金で買われている身分。
そんなろまん街で銀之助は立派屋で女遊びをしようとして、実は男の証がないことがばれて、逆に女郎おかしとして働かされる羽目に。闇太郎は天晴に見込まれ、出身の沢渡村の村人たちにも囲まれながら、しかし記憶は戻らない。
そんな中、天晴は闇太郎に領主を殺せばお泪と所帯を持たせてやる、と持ちかけられる。領主は百姓には高い年貢を課し、色町にも厳しい、その領主を殺せばいい世の中になる、という算段。お泪からは、「人殺しにはなって欲しくない」と止められたが、実行してしまった闇太郎。
天晴は闇太郎を匿い、立派を追い出して闇太郎とお泪に祝言を挙げさせる。
そこへ、立派とお寸の息子、サルキジが江戸より帰ってきた。サルキジは、自分は沢渡村の闇太郎と名乗る男に会ったことがある、しかしそれはろまん街に今いる闇太郎ではない、という。どちらかがニセモノの闇太郎・・・。
立派を追い出して街を仕切っていた天晴は、新しい領主、蟹右衛門とは昔からの腐れ縁。今度は百姓一揆とろまん街のごろつきを一網打尽にして、武士に仕官する算段で、百姓一揆の首謀者を闇太郎に仕立て上げようとする。
そこへ、「自分が沢渡村のやみ太郎」と名乗る男が現れる。彼は大通り魔の件も、沢渡村の村人のことも、お泪のことも、覚えていた。では闇太郎は誰なのか?
天晴は闇太郎に過去を教えてやるという。天晴は闇太郎の正体を見抜いていた。かつて自分が武士に仕官するために蟹右衛門に指示されて武家の息子、久太郎と仕組んで沢渡村でお泪の両親と村人を殺した、その久太郎だという。しかし同じように仕官を約束していた蟹右衛門が、実は久太郎の母をろまん街に売り飛ばしていたことを知った久太郎は、母が汚される現場を見て我を失い、人々を惨殺した。やみ太郎は確かに逃げ出したが、目をつぶされていて、久太郎をやみ太郎と思ったがめ吉から「蜉蝣峠へ行け、闇太郎」と言われたことだけが、彼の記憶に刻まれてしまった。
誤解の連鎖、それぞれの仇、食い違い・・・それぞれの想いがぶつかっていく。

なんだか、前半のはじけ方とか、それぞれのキャラ立ちが激しかった分、ラストの怒涛の展開がものすごい重たいです。重たくて、悲しくて、切なくて、でもなんだか色んな「愛」が溢れてる。
一番強烈な「愛」はお泪と闇太郎。記憶がない闇太郎を想うお泪の愛、何の記憶もない自分に初めて無条件に向けられた愛を受け止める闇太郎、真実が分かった後も、闇太郎はいう、「俺にはあなたの記憶しかない、だから殺したくない、死にたくない、愛している」・・・・・究極の愛です。そして、親の仇だと、幼馴染と間違えるなんて自分が情けないと、殺したい、死んでしまえと、憎んでいたお泪も、その愛の前に、彼への愛を見出して。こっちも、究極。
なんとなく、リチャード3世のアンとリチャードの関係を思い出しました。あれだって、憎い憎いと言っていた男に愛を捧げられて落ちてしまうんだけど、私にはあの愛はわからなかったが、こっちの方が凄みがあるし、究極だし、胸に来ました。
ラストでお泪は蜉蝣峠で闇太郎を待ちながら、蜉蝣の中に闇太郎を見つける。逆に闇太郎は蜉蝣の中にお泪と母を重ねた姿を見つける。この闇太郎の蜉蝣は、母の記憶を思い出したからなのかしら。その場合、逆にお泪のことは覚えてるの、覚えてないの?ちょっとまだここ考え中。

闇太郎の愛情は、お泪だけじゃなくて、多分ろまん街の全ての人に向かって、人間愛があったんだと思う。彼にとっては過去の色々は意味がなくて、ただただ記憶を失って辿り着いた彼をよくしてくれた、歓迎してくれた、ろまん街と沢渡村の人々は、愛すべき存在で、彼らが自分に向けてくる憎悪は彼には覚えがなくて、だから闇太郎自身は彼らを斬りたいとは、殺したいとは、思ってなかった。だから、きっと「泣いて」いたんだと思う。ただ、天晴から昔のことを聞き、戦いの中で母を思い出したとき、やはり彼らは、闇太郎にとっても許しがたい存在になってしまったのかもしれない。

メインのストーリーの傍で流れていた、銀之助(おかし)とサルキジの愛。これもねー。なんか、色んな伏線があったりして、してやられた!という感じでしたが。元々男の銀之助が、おかしとしてろまん街に存在し、サルキジと出会う。いつの間にか仲良くなって、というお寸立派夫妻は、「男と女だから!」と言い切るサルキジに「あ、あぁ・・・まあ、確かに、男と女だね」と曖昧な返答。ここ、私は普通に「ああ、二人はおかしが銀之助っていう男だから、男と女、てサルキジは思ってるけど複雑、みたいな心境なのかな」と思ってた。そしたら!違う!!サルキジ自身が、女の子だったとは!ここは全く想像してなかったです。でも、実は伏線があったんですよね。子供の頃のやみ太郎とお泪役、やみ太郎は女性劇団員、お泪を、サルキジ役の木村了くんが演ってたんですが、単に木村了くんが女性っぽいから面白くてやってるのかな、サルキジ登場まで時間があるから別の役も付けたのかな、と思ってたんですが、違う。あれは、きっと、サルキジが女性であることの遠い遠い伏線。木村了くんは、この舞台では女性役ですよ、という伏線。だったんではないかと。
そして、どこに惚れたのか聞かれたおかしの答えは「走ってるサルキジの後姿が好き」だと。これもこの時はふーんとしか思わなかったけど・・・最後に、「お互い元に戻ろう!」と無邪気に言うサルキジに「ダメ、戻れない」というおかし。てっきり、自分は男の証を失っているから、だと思ったら、違ったのね・・・おかしは、男のサルキジに、その後姿に、愛を見出していたから。だから、そうじゃないなら、無理だと。
そしてサルキジを自ら殺すことでサルキジを自分だけのものにして、そして彼の衣装を身に纏い、彼(?)を背負いながらこれから生きていくんだと。男だか、女だか、わからない自分だけど。サルキジを愛したことは忘れないと。蜉蝣峠で銀之助が見るのは、サルキジの後姿だったんだろうな。だから、お泪が見る闇太郎を、銀之助は見えない。

立派、お寸夫婦の夫婦愛と、子供への愛情も、特徴的。
100回以上も結婚と離婚を繰り返す立派とお寸。多分、二人はちゃんとお互いにお互いを必要としていたんだと思う、政治的な意味じゃなくて、人として。だけど、そこに跡目争いという要素が加わってしまって、バランスが保てなくなった。お寸は、最後に血を吐くように叫ぶ、「私だって、ヤクザの家に生まれていなければ・・・」これが、彼女のしがらみ。ヤクザの家の、それも女の子に生まれて、人並みの生き方はできず、かといって跡目を自らが継ぐことはできず、自分の夫が継ぐか、弟が継ぐか、どちらかが継ぐのなら、継ぐ方に着いていないと、自分の立場がなくなる。彼女の居場所はそこにしかないから。だから、夫に傾いたり、弟に傾いたり。だけど、きっとそのしがらみさえ無ければ、そんなこともなかったんだろう。
立派も、ヤクザの親分の下で頭を使って立ち回る立場が似合っていたはず。だけど、お寸と夫婦になったことで、「跡目を継ぐ」という目的を得た、彼の大義名分は、お寸の夫であること。立派とお寸は、それぞれお互いに補い合うようなキャラをしているのに、だからこそ惹かれたはずなのに、それだけではいられなかった。
だけど、二人に共通していたのは、子供への愛情。ただし、その子供、サルキジ自身にも大きな枷を与えてしまった、それもヤクザの家だから。彼(彼女?)が殺されたことを知った立派とお寸の衝撃が、悲しみが、登場人物たちをさらなる絶望に向かわせてしまった。
闇太郎に懸賞を掛ける時、始めは立派が「20両!」と言っていたのを、サルキジが殺されたことを知った瞬間、お寸が「50両~!」と鬼気迫る表情・声で吊り上げた、あの瞬間、すべてがMAXに振り切れた気がする。闇太郎に向かってお寸が叫んだ「ヤクザの家に生まれていなければ、嫁に行く年頃だった」という言葉が悲しい。人並みの親として、娘の花嫁姿を見たかったという想いを、持っていたのだ。それは、多分自分にも重ね合わせていて。自分だけではなく、娘まで不幸にしてしまった、ヤクザの家という生まれが、二人の、サルキジの、足かせだったのかもしれない。

と、考えると、天晴が武士になろうとしていたのは、そのしがらみから抜け出すため?
天晴の愛は、何だったんだろう。天晴は、何を目指していたんだろう。どうも、そこが良く分からず考え込む。お泪のことは、「好きだと思ってるけど口にしない」と言ってるけど、「夫婦にならなかったのは、自分が彼女の両親を殺したから」だと言うけれど。そこに彼女への愛情があったのか・・・測れない。彼が酒を飲み、刀を振り回すのは、そうしていないと現実というものの手ごたえを感じられないからか、または、現実から逃れたいからか。そんなような台詞を、言っていたけど、その真意は何だろう?闇太郎に親を殺された、闇太郎は自分にとっても仇だ、と言うけれど、じゃあなぜ始めからわかっていながらあんなことをさせたのか。自分に都合がいいから?でもそれで闇太郎とお泪を夫婦にさせたのはなぜだ?闇太郎に絶望を味あわせたかったから?あのタイミングで全てをばらす意味はなんだったのか。
サルキジのことだって、吐き捨てるように粗末にしていたけれど、でも彼の秘密を実は知っていて、でもばらしもせず、どちらかというと、哀れんでいたのでは、と思った。その上、お寸のことも、やはり愛していたんだろう、闇太郎との決闘の最中、誤ってお寸を斬ってしまった立派を即座に殺してる。「慣れないことをするからだ(お寸を斬る羽目になった)!」と憎悪を抱きながら。
天晴の心のうちがあまり説明されてないのか、そこは敢えてなのか・・・次回は気をつけながら見てこないと。

もう一人、ささやかな愛情を持っていたのが、がめ吉。
どこか達観した態でろまん街のすべてを見る彼。でも彼の「見えない目」が誤解を呼んだ、それは責めることはできない。彼は彼なりに、幼かったやみ太郎を案じていたし、沢渡村から流れてきたお泪のことも案じていた。そして帰ってきた闇太郎のことも、案じていた。
だけど、最後の最後に彼が助けたかったのは、お泪。闇太郎を殺すことが、お泪のためになるのかどうかはわからないけど、がめ吉の中で「これ以上あの娘に悲しい想いをさせたくない」という気持ちがあるから、闇太郎が一緒ではダメという結論が、あの行動に出させたんだと思う。切ないよ、がめ吉っつぁん。
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by yopiko0412 | 2009-03-31 01:56 | 演劇  

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