Team申『狭き門より入れ』

2009/8/23-14:00開演 PARCO劇場

佐々木蔵之介さんが主催のTeam申の公演、今までも興味はあったのに観に行けず・・・今回は、完売後にぽろっと出てたチケット(位置的に、関係者席の開放でしょう)をゲットして観に行きました。
これが・・・もう、どストライクで私の好みで、脚本も、演出も、役者も、ほんとにパーフェクト!久々にこんなにのめりこんで集中して、観終わった後も心の中で反芻して・・・「誰かに見せたい!」と思ったなあ。しかももう一度観たいし、自分が。

自然と引き込まれる不思議な世界観、キャラの立った登場人物、面白いし、笑えるし、びっくりするし、泣けるし、考えさせられるし、怖いし、感動しちゃうし、ぐっさり突き刺さるものがあるし、なんだかいっぱいなんだけど、全然溢れてない、きっちり収まってる。そして余ってない、無駄がない。
2時間が密度濃く、そしてあっという間。絶妙です!

というわけで、めちゃめちゃおススメです!当日券も出てます。観て欲しい、ほんとに。
でも、私の感想はネタばればれです。何も知らずに、無の状態で観て欲しい。
あ、でもひとつだけ。
「コウシン」は「更新」と変換します・・・。それだけ。(笑)



「世界は更新する」
死んだ友人にそっくりの人物からこう告げられた天野は、会社をクビになり、退職金を手に実家のコンビニへ帰った。世の中では、原因不明の病気が蔓延し、世情も不安定な時期。
実家では父が倒れ、コンビニは弟が任されている。店内には天野のかつての上司で彼が告発した時枝、万引きをした少年で父親と親交があったという魚住がいた。
弟が店を離れている隙にトラブルが起こり、魚住の行動が元で3人はどこか異空間へ飛ばされる。そこで天野は先ほどの人物が実は死んだと思っていた葉刈(はかり)だったと知る。そして葉刈ともう一人の謎の人物は天野と時枝に謎の言葉を残して「元の世界」へ帰した。
元の世界へ戻った天野と時枝は、何が起こったのか、検証していく。同じく「異世界」へ飛ばされた少年魚住も元の世界へ戻っていたが、この世界では彼の存在がなくなっていたり、異世界で盗まれたはずのお金が元の世界では盗まれていなかったり。
そして検証の結果、もう一度同じ状況を再現してみることになり、再現は成功した。
その「異世界」で葉刈と相棒の岸から語られたのは、驚愕の事実。
現実世界の過ちを正すため、少しずつ軌道修正した新しい社会を平行して作ってきた。
それがこの「異世界」であり、世界を旧世界から新世界へ「更新」する準備が整った、しかし「新世界」へ行ける人間の数は限られていて、そのためには「資格」が必要。さらに、「新世界」へ行った人間は過去の記憶も「更新」されて新しい世界を生きる・・・。一方、「旧世界」に残された人間は旧世界が崩壊するまで3年しか残されていない、そして旧世界がどのような末路をたどるのかはわからない・・・。
コンビニは旧世界から新世界へのゲートになっていて、天野の父はその門番の役割を担っていた、しかし門番は自動的に旧世界に取り残されることになっている。代わりに、門番が「家族」と認めた人間のみ、無条件で新世界へ行くことができる。
父親が死んだ今、門番の役目は弟に引き継がれる・・・。天野は門番は自分がやると言うが、門番になる人物は、その人物自身に新世界へ行く資格がなければならない。今の天野にはその資格はないという。
これを知った3人は、自分たちが新世界に行ける資格があるかどうか、試されることになる。そして残り少ない旧世界へ戻って何をするか。
3人は自分たちの存在がなくなった状態で旧世界へ戻った。
天野は「存在しない人間」として弟と初めて腹を割って話をする。そこで初めて知る、父の思い、弟の素直で迷いのない人生。自分がやってきたことがなんだったのか、次第にさまざまなことに気づいていく天野。しかしこの旧世界はもうすぐ終わる。弟は何も知らずに門番の役割を果たせば、旧世界に取り残される。それをどうしても阻止したい天野。しかし彼には「資格」がない。
運命の「更新」の日、再び店に現れた時枝と魚住も、まだ彼らがなぜ「資格がない」のか気づけない。しかしそれをわからせようとすることが逆効果にもなる・・・。
旧世界か、新世界か、天野は自分の人生を掛けて選び、守りたいと願う・・・。

あらすじっていうか、かなり詳細で書いてしまったけれど・・・忘れたくないから。忘れないだろうけど。でも残しておきたいから。

という意味では、いろんな台詞が、印象的で。戯曲が欲しい。
台詞だけでなく、場面が、演出が、役者の表情が、印象的で。DVDでどこまで抜いて見せてくれるかな?

前半のまだ掴みきれてない雰囲気とか、徐々にわかってくる天野のこととか、そして異世界の話とか。
ストーリーの緻密さはもちろんなんだけど、面白さを散りばめてるのにすっごい重いの。いや、逆に重い話のはずなのに、重さを感じさせずに、むしろ面白かったり感動したりなんだけど、ふと気づいたら重い、みたいな。

印象的なシーンはいくつもあるけど、思い出せる範囲で。
・天野の過去について葉刈から聞いた後の、岸の台詞「誰も傷つかない犯罪と、誰かが傷つく正義、どっちが正しいのか」(みたいな感じ)て・・・どっちも辛いと思う。誰も傷つかない犯罪と見過ごすことも辛いんじゃないかな。ただ、この時の天野は、もしかしたら辛いというより、自己満足の気持ちが大きかったんだろう。
・あーでもこの「資格」の話ってひたすらに「自己犠牲」「自己満足」「他人のためは自分のため」「自分が助かるためにどうするか」とかそのせめぎあい、禅問答ですよ、ほんとに・・・。何が正解かも、何が一番かも、わからない。
・魚住と天野の父とのやり取り、「もう万引きしないって言うなら、信用するよ」と言われて、信用されてしまうと、裏切れない気持ちになる、という魚住。まあ彼はまたやってしまったけど、でも天野の父は「信用」の大事さを彼に教えたんだよね。
・存在しない人間になってしまった魚住が、岸たちの「新世界に行った人間は旧世界のことは忘れてしまう、忘れてしまうんだから、悲しくない」という理論に反発するシーン。鶏が先か、卵が先か、の議論にも似てるし、矛盾の話でもある。でも、それでも、「寂しい」という気持ちがあるんだ。それが、人間。
・存在しない人間として旧世界に戻った天野が、弟と話をするシーン、ここはもう面白いのにすっごい切ないし悲しい。「(親父と兄貴は)離れてるほうが仲がいい」「どうしようもないけど、家族だから、結局本当に嫌いにはなれない」とか、雄二(弟)の本音が出る台詞がたくさん。それを聞いてどんどん素直になっていく天野。自分と子供、どっちかしか生き残れないなら、という問いに、迷いなく「子供」と答える雄二、それが新世界への「資格」なんだよね。さらに、最後の1日は、家族とご飯を食べるという雄二。そしてそれを聞いて、おにぎりを分け合って食べる天野の、子供のような笑顔、うれしそうなその表情なんだけど、そこには天野にしかわからない感動があって、そして果てしない絶望がある。だから「絶望って絶妙な調味料」な台詞とか、すっごい可笑しいの、可笑しいんだけど、めちゃめちゃ泣けるの!この一連のシーンは泣きながら笑い、笑いながら泣く、珠玉のシーンだ。
・運命の日、どうしても雄二に門を閉めさせたくない天野、そして時枝と魚住にも「資格」について気づいて欲しい天野の、ほんとうに鬼気迫る説得シーンは張り詰めた空気。でもやっぱり途中可笑しいんだけど。時枝さんも魚住君も、わかってあげようよ!て思うけど、だからって自分にこの状況を説明できるかって考えると無理なんだよね・・・。こぶとり爺さんの話も、私は普通に「二人目の爺さんが欲をかいたからじゃないの?」と思ったけど、違った。「上手いとか、下手とかじゃない、一人目の爺さんは純粋に踊りが好きだった。ただそれだけなんだ!!」てもう究極の人間の純粋さしか問題にしてないじゃん。上手いとか、下手だとかも、ある意味何か選別された基準だけど、ただ踊りが好きだった、ていうのは、何の選別もなければ欲もない、相手が鬼だとかも関係ないし、自分がどこにいるかも関係ない、ものすごく「無」の中にあって「唯一」の想いだったってことでしょう。
・そして全てを吐き出して、力尽きて、もうだめだ、と崩れ落ちた天野の「すいません」「すいません」が彼の絶望をさらに加速してた。
・そんな天野についに「資格」を与えた岸の「必要なのは願いじゃない、祈りだ」て・・・わかるような、でもなんか説明しようのない範疇なような気がします。
・詳細をわかっていない時枝と魚住、そして雄二に、晴れ晴れとして表情で「もう大丈夫」と言い切る天野が、あまりにも清々しい。「二人も、俺を家族だと思って欲しい」という天野。「親父もそう願っていたはず」・・・て、ああそうか、親父さんは、雄二を代理人にして、天野と、時枝と、魚住を箱舟に乗せようとしてたのかな。だから「困ったときはうちに来い」だったのかもしれない。
・別れ際、天野は「これが最後の更新になるように、見張っておけよ」と葉刈に託す。「任せておけ」とその想いを受け止める葉刈も、表情は明るい。天野の気持ちを、理解したんだろう。
・記憶がなくなってしまったら、結局同じことの繰り返しになる、そうしたらまた更新するのか、それでは意味がない。という前段でのやり取りを思い出す。
・そこに最後のダメ押し、少しずつずれ始めた、旧世界と新世界、まだかすかに重なっているその刹那に、上下のつながりで新世界に電話する天野。「この世界は、他人事じゃないんだからな」ともはや天野のこともわからなくなっている雄二たちに、彼らの新世界への警告と未来への希望を投げかける。
・旧世界では、世界の崩壊が始まっている。でも、3年あれば、何かできるかもしれないと、天野はまだ希望を捨てない。何も知らない雄二が奇しくも放った言葉がある。「1日といわず、めせて3年くらいあれば、子供たちにも色々な場所やものを見せてあげられるのに」

まだなんかあるかも・・・。ほんとに、どこを取っても印象的なシーンが多すぎます。
そして、演出もほんとに絶妙だった。
基本的にコンビニだけのシチュエーションなんだけど、新世界との行きつ戻りつの演出が演劇的で、過去と現在の入れ違いも上手いし。
コンビニの時計がありまして。これが開演時間はなんか多分現在時刻を表していたような気がして、思わずLast Five Yearsの時計の演出にげんなりしたことを思い出したんですが、今回はそんなことはなく!ていうか、時計で旧世界と新世界を飛んでいる現象を現していて、おぉ~!となったんです。

役者陣は、舞台情報が出たときから好きな布陣だし、ある意味化学反応を楽しめそう!と思ってたんですが、それぞれぴったりだし、醸し出す雰囲気が自然すぎてすごかった。
蔵之介さんがちょっぴりパワーマイムまではいかないけど、身体表現使ってるシーンも見られて貴重!浅野さんはいわずもがな。手塚さんの怪しげ~な雰囲気はお手の物!手の動きだけでもかなり怪しいから!そして椅子に座るときは必ずあの座り方なのね、とか(笑)有川さんは私はお初でした、前川さんのフィールドの方ですから、もちろんブレなし。中尾くんは、初舞台だそうで、でも役柄的にも、中の人的にも、兄貴たちの間に放り込まれた若者、という印象なのでちょうどよく。もうちょっと芝居くささが抜ければもっと雰囲気出ると思う!亀ちゃんは現代劇の舞台はこれまた初めて。亀ちゃんのちょっと硬質な感じと、異世界感がいいフィット感でした。役柄的にも、そういう位置づけですものね。十二夜なんかで、コメディもいけるわけだし(笑)

一気にがーっと書いてるし、細かいことはうろ覚えなんですが、とにかくすごかった。面白かった。こういうテンションになれる舞台ってやっぱりそうは出会えないんだよねーと思ったり。
出会えて、良かった、ほんとに嬉しい。
ちなみに、冒頭にも書きましたが、私、「世界はコウシンする」を「世界は交信する」だと思ってました・・・途中で「更新」だとわかってちょっと恥ずかしかった(爆)
[PR]

by yopiko0412 | 2009-08-24 22:15 | 演劇  

<< 福山☆夏の大創業祭 稲佐山 『牡丹燈籠』 >>