『牡丹燈籠』

2009/8/15-18:30開演 シアターコクーン

シスカンパニー×いのうえひでのり、キャストもいつものいのうえさんとは一味違う人もいたり、初舞台の人もいたり、題材も夏らしく(?)怪談物。どんなか想像せずに観劇しました~。

劇場に入ってすぐ、ロビーの雰囲気が思いっきり「和」なことに、一瞬コクーン歌舞伎を思い出してみたり。簾が掛かり、ラムネや氷あづきも売っていたり、おむすび(かな?)も売っていたり、音楽はお囃子チック、夏祭りのような雰囲気でした。でも、怪談(笑)




冒頭は、夜の川。真っ暗な中、盆の回りを利用して、葦のような植物と小さな釣り船が一艘。この時点で「盆を使ってる!」ということにびっくり。あんまりいのうえさんで「盆」のイメージがなかったのですが・・・コマ劇場ではラストに使ってたけど、それくらいかなあ。
と思っていたら、終始盆を利用しまくりの舞台でした。でも単なる場面転換にとどまらず、空間と時間の経過を絶妙に表現する盆使いは、さすがいのうえさんらしいアイディアで、単調にならず私は好きでしたね~。
コクーンて、いのうえさんにとってはいささか「こじんまり」した舞台なんじゃないかと思ってましたが、それでも随所にいのうえさんらしさがいっぱいの舞台で、色んなものが詰まっているのに、不思議と手狭には感じないつくりでした。そこは、美術の掘尾さんもいつもながらすばらしい!

面白いなーと思ったのは、また映像も使ってたけど、映像の投影スクリーンと照明効果と本来の舞台セットの役割を果たしていた、不思議な素材の壁たち。透けてみえると思えば、スクリーンにもなり、もちろん透けない時もあり。照明を受けるとその趣がどんどん変わっていくというのも面白い。映像は今回は少なめでしたが、新三郎とお露の逢瀬の場面、あれ別にシルエットでやってもよかったのではないのかなあ、と思ったり。緑の光を使うためには映像にするしかなかったのかしら?

物語は、3組の男女と彼らが犯した罪だったり、彼らの人間関係だったりが、幽霊と人間が絡み合い、幻か現かもわからず交錯していく・・・。
冒頭の川の場面から新三郎の夢、のあと、七草をあしらった香箱の蓋が、意味があるのかと思っていたら、あれ以来出てこなかったなあ。でもあの時点できっとお露は死んでたんだな、と思います。お露は死んで、新三郎の夢にまで現れて、そして実際夜中に訪ねてくるようにまでなったと。その暗示としての夢と香箱、あの世とこの世がつながってしまったのが、あの川なんだろうか。
お互い死んだと騙されていただけ、なんていう言葉を信じちゃう新三郎も、どこか浮世離れしたお坊ちゃまなんでしょうけど、それだけお露のことを想っていた、とも取れる。だからこそ、伴蔵がお札をはがしちゃったせいで家の中に入ってきたお露を見て「うれしい、やっぱりあなたは幽霊ではなかったんだ」なんて喜んで招きいれて、結局取り殺されてるわけですし・・・。でも、和尚さんのところでは「死にたくない」と言っていたことも事実。新三郎は死の淵で、どんな想いだったんだろう??

ちなみに、伴蔵に連れられて和尚のところを訪れた新三郎の場面。幽霊に取り憑かれていることにショックを受けてる新三郎に、和尚が「人間、生きていてこそなんとかかんとか」と諭す場面で事件が!
和尚さん、台詞が出てこない~!!(爆)
一度つっかえたから、あ、間違ったのね、と思って。言い直し始めたけど、途中で止まっちゃって。
「えー、ちょっと待ってくださいね」「人間、生きていてこそ・・・・・」「・・・・・・・・・」
しばし絶句。
それを聞いてる瑛太(新三郎)もどうしていいやらわからず半笑いで絶句。
見かねた段田さん(伴蔵)が「もういいよ、和尚!!わかったよ!!」と割って入り、瑛太を和尚から引き離す~。会場も笑い、和尚はうなだれ、瑛太は段田さんに引きずられつつも笑いが止まらず(笑)段田さん、瑛太をなんとか落ち着かせつつ、芝居を元に戻す戻す。「まあ、あれだ、命あってのものだねって言うじゃないか!」
で、なんとか事態は収束。
ここは、さすがの段田さんのリカバリー!!瑛太、笑いすぎ!和尚、頑張れ!(ちなみに、和尚役の人はその後別人の役で出てきても観客からは笑われていたのでした~。)でも舞台ならではのハプニング☆
これ、新感線の罰ゲームポイントがあったとしたら一発罰ゲームでしょう!!

前半はお露と新三郎の恋焦がれカップル。お露にしてみたら、恋しい新三郎に会いたい、一緒にいたいだけなのに、迷惑がられ、お札まで貼られて・・・取り殺しちゃうのは、生きてる側からいったらとんでもない話だけど、彼女にとってはどこまでいっても「純愛」なんですよね。
そして、あと2組も、実は愛情溢れるカップル・・・なんだけど、そこに欲とか嫉妬とか罪悪感とか色んなものが絡んできて、一筋縄ではいかない。
伴蔵とお峰は、普通にしてれば、貧しい中でもささやかな幸せを感じながら寄り添って生きてる夫婦。新三郎への恩も感じてるし、もちろん慕ってもいるはず。それなのに、お露とお米の幽霊の出現が彼らの運命も変えてしまう。新三郎は裏切れないし、幽霊も怖い、となったらどっちに転んでもいい名案を思いつくお峰・・・これが夫婦の分かれ道。幸せなはずだったのに、欲にくらんでしまったのに、そのことに気づいたのはもう後戻りできないときで。関口屋のおかみさんとなったけど、幸せではない、とお六に語るお峰のシーンが印象的でした。
そして、幽霊から得た100両で大店の主人になった伴蔵。すっかり人が変わったようで、女に目がくらんで、お峰とも心通わすこともできなくなり・・・。二人の壮絶な喧嘩とわかりあいの場面がすごかった。全てを洗いざらい話してしまうお峰に業を煮やした伴蔵が、お峰の口をふさぐ!
私はてっきりこの場面で手を掛けてしまうのかと思ったら、文字通り「口をふさいだ」ことでお峰を黙らせて、分かり合ったのか、と。だけど、きっと彼らの罪は彼らに罰を与えるんだろう、と思ってた。それだけに、お峰と連れ立って出かけた帰りの伴蔵がお峰を今度は本当に「口を封じる」ために殺してしまう場面にはびっくりした。
さっき安心した分、余計に「え?!」という驚きが!でも伴蔵は、やっぱりお峰のことも愛していたはずで・・・。ただ、そんなお峰を殺してまで「新三郎殺し」を隠そうとしたのに、そのお峰殺しの咎で捕まってしまうのは・・・大きな皮肉。

伴蔵と逆の皮肉な運命にもてあそばれたのは、お国。主人を殺して不義の男と家ごと乗っ取ろうとしたら、全てを失って、不義の男は見る影もなくなり、自分は女郎屋で働く羽目に。それでも、お国の源次郎への愛情が揺るぎないのは、確か。同じ罪を背負うことで、そして源次郎が動けない分自分が養うことで、源次郎を独占できる、という、ある種歪んだ愛情だったかもしれないけれど、それでも彼女にとっては源次郎が全て。
だから、最後は不慮の事故(というか、怨念に取り殺された)源次郎殺しの罪で捕まった彼女は、伴蔵とは逆に、隠したかった2件の罪は認めるけれど、愛した男を殺した罪は認めない。たとえ、それで厳罰になろうとも、彼女にとってそれを認めることはできなかったんだろう。

そんな二人をあざ笑うかのごとく、新三郎とお露、お米にそっくりな3人が幸せそうに通り過ぎ。全てが夢か現か、虚実綯い交ぜの幕切れ。

伴蔵は、段田さん。もう、安定感抜群。前半は気のいい使用人で、幽霊に怖がったりお峰に甘えたり。後半は成り上がりの旦那がはしゃいでる感じ、それでもお峰は怖い、でも新三郎の一件は忘れたり、お峰との壮絶な喧嘩はほんとうにすごかった。お峰を殺す場面での鬼気迫る表情、裾をまくった脚のしなやかさにも眼福(笑)お峰の伊藤蘭さんは舞台で拝見するのは初ですねー。独特のハスキーボイスで、ちゃきちゃきした姉御肌のいい女房でした。若干演技がずーっと同じトーンで、飽きちゃったのと、心情がわかりにくかった。喧嘩のシーンとか、ずーっと同じトーンだからもうちょっと緩急つけて欲しかった気もしますが・・・。

お国の秋山菜津子さんも、大好きな女優さんだし、絶対の演技力と存在感がすばらしい。妖艶で、でもかわいらしくて、一途だったり、一転して肝の据わった女で、メーターがあっちこっちに振れまくりなのに、決してぶれないのでお国の心情がぐさぐさきました。
台詞の中で「お国は27、8歳なんだけど、綺麗だから20そこそこに見える」みたいな描写があって、まあ中の人の年齢は言いっこなしですが、ちょっと面白かった(笑)うん、でも本当に綺麗でした~♪
チラシの中に、野村万斎さんとのマクベスのチラシが・・・彼女でマクベス夫人なんて、すっごい見てみたい!

そして、これが初舞台の瑛太。アクシデントでは段田さんに助けられたりもしてましたが、世間知らずのお坊ちゃま、という役どころにぴったりの雰囲気をもっていて、濃いキャラクターの中で一種清らかな新三郎が新鮮でした。出演者が並ぶと、結構瑛太の背が高かったのですが、今まであんまり背が高いと思ったことなかったなあ。華奢だからでしょうか。次回はケラの舞台で主演だそうで・・・どう化けるか楽しみです。

もうお一人。お米、お六を演られた梅沢さん。さすがー!面白いし怖いしもちろん緩急自在、ぴしっと舞台を締めてくれていました。

演出・舞台美術に話を戻すと、タイトルバックのシーンは、なんだか吉原御免状を思い出しましたね~。4つ燈籠飾りが出てきた時点で、タイトルコールだろうことは想像できてしまいましたが、やっぱりかっこいい。木をふんだんに使った美術の作り方も、幕が開けた瞬間目に飛び込む緑が鮮やかで、それでいて夜のシーンではそれが逆に「おどろおどろしさ」をかもし出し、そしてそこに蛍の緑と蛍火の緑が絡み合い・・・な色覚に訴える演出も面白い!
音楽は司さん。朧~風な和風仕立てで作品イメージとぴったりマッチ。
この辺はいのうえさんのアイディアと美術、音楽のお二人の共同作業はお手の物ですね~。

そうそう、休憩時間に座っていたら、目の前を通った人が・・・「あれ、克実さんじゃない?」とシルエットだけで気づく私(笑)まさに、高橋克実さんでした。これで劇場で同じ観客として出会ったの3回目ですけど~。相変わらず普通にいすぎて、こちらも普通に見送ってしまいましたが、気づいたほかのお客さんが握手を求めてました。気軽に応じてくれてましたが、劇場の観客って、劇場で芸能人に出会っても、割とおとなしいというか、触れないイメージだったので、そっちにびっくり。だって、前に東(少年隊)が通ってたときは、モーゼのごとく、人が道を避けてたもの(爆)ま、そこは克実さんのキャラかもしれませんが~。
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by yopiko0412 | 2009-08-18 19:59 | 演劇  

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